鬼滅の刃

□毒に侵されて
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「冨岡さん」





ふわりとした柔らかい声が空から降ってきて

蝶のように俺の前に降り立つ




「どうしたんですか?ボーッとして。まあ、いつものことですけど」



柔らかい表情の中に悪戯さを含ませて


そんな風に笑いながら、ストンと俺の隣に座る胡蝶を見ると



ああ…今日も無事だったと密かに胸を撫で下ろした






「……別にボーッとなどしていない」


「そうですか?いつもぼんやりしている印象でしたよ」

「そんなことはない」

「ふふ。否定する時だけ反応が早いんですね」




藤の花の甘い香りが一層際立つ




胡蝶からはいつも甘い匂いがした






柔らかな表情と甘い香り






胡蝶にぴったりだと常々思う






「冨岡さん任務終わりですよね?寝なくて大丈夫なんですか?」

「…天気がいいから、たまには太陽に当たろうと思って」

「そうですね。人間やはり太陽に少しでも当たらないと体内時計も狂ってしまいますよ」


そう言って瞳を閉じた胡蝶の横顔は


キラキラと陽の光が当たって








綺麗だ








そう素直に思った


















「冨岡さん…?」














俺の身体が影になって



胡蝶が閉じていた瞳をゆっくり開ける











細い手首を優しく掴んで




そっと胡蝶の背中を床に預けた












「…ちょっと。何ですかこの手は」




ギロリと下から睨む仕草を見せるが


抵抗する気はないのか、力は全く入っていない









「…さあ…なんだろうな…」












ちゅ…と静かに音を立てて



淡い口付けを落とすと



華奢な身体に力が込められた











胡蝶の柔らかい唇を舌で割って





深く




永く

















「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」







抵抗を見せたところで

ゆっくりと唇を離してやると


真っ赤な顔をした胡蝶が息絶えだえに

俺をドンと突き放した







「も…もう!!何するんですか!」




今にも顔から火が出そうなくらい真っ赤な胡蝶を見て

フッと笑いが溢れる



「なっ!何笑ってるんですか!!からかってるつもりですか!?」

「…いや。顔が真っ赤だなと思っただけだ」

「とっ冨岡さんのせいでしょう!?」

「まあ…そうだが」

「そうだがって…!他に何か言うことないんですか!?」

「特にない」

「ちょっ…も…そ、そんなんだから皆に嫌われるんですよ!」

「俺は嫌われていない」

「…本当に否定だけは早いですね」



はあ…と溜息をつく胡蝶を引き寄せて

改めてより近くで向かい合う






「…さっきから距離感がおかしいですよ」





先程よりもわざとらしく余裕ぶって



けれど照れが見え隠れする








そんな胡蝶も愛おしいと感じてしまうのは


彼女の中に流れる毒に侵されたからだろうか






「ああ…おかしくなったのかもな」






ゆっくりと身体を寄せて



もう一度唇を寄せると



今度はそれに呼応するかのように




胡蝶の甘い唇がぴったりと重なった

























夜になれば

また次の任務が来る











どうか

またこうして逢えるようにと願わずにはいられない















「……次同じことしたら毒を打ち込んでやりますよ」

「じゃあ次もあるんだな」

「どうしてそう前向きなんですか」






腕で顔を隠しながらフイッと消える彼女の背中を見送りながら







また逢えますようにと目を閉じたー…



















END


 

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