恋乱W

□京の任務とべっぴんの湯
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「ひっ…ぃっ!やぁっ…やだっ…!」






陶器のような白くて滑らかな肌が愛しい







「んぅっ…さぃ…ぁっ…」







柔らかく紅い唇も








「おねが…ぃっ…」








吸い込まれそうなほど大きな瞳も











「もう…許して…」










狂おしいほどにー…























「あれ?才蔵さん…どうしたんですか、こんなところで」


人が行き交う城下


そこでばったりと買い物帰りの名無しさんと会った



「別に。ただ甘いものが食べたくなっただけ」

「言って頂けたらお作りしますよ?」

「今すぐ食べたい気分だったから」

「ふふっ。才蔵さんは本当にお団子がお好きなんですね」


ふわりと花のように微笑む名無しさんの空気はこの団子よりも甘くて

花より団子は嘘だと疑いたくなるほど、その場の空気までもが甘味を帯びたように感じる





もちろん今ここで再会したのも偶然ではない





「それで荷物全部?」

「はいっ!今日は少なめで助かりま…あっ!」


半ば強引に彼女から荷物を攫うと、くるりと背を向けて先を歩く




「才蔵さん!荷物!今日は軽いから大丈夫ですよ!」

「…それより帰らないの?」

「っ…行きますっ!」



パタパタと遠慮がちに俺の横に並ぶと、ひょいと顔を覗き込んで
またあの笑顔が広がった




「いつもありがとうございます」

「……別に」





柔らかい




ふわふわと足元が浮き立つようなこの感じ




けれどそれは決して嫌なものではなくて




この平和で穏やかな時間がいつまでも続けばいい…


そんな密かな願いは、この後
身の程知らずの馬鹿な願いだったと、つくづく思い知らされることになるー…



































「京へ…ですか?」

「ああ、どうだ?お前にとっても悪い話ではないだろ?」

「それは…確かに置いてきた母と弟のことが気にならないって言ったら嘘ですけど…」

「帰省がてらだと思って頼むよ名無しさん」



平和だった日常は突如現れた武田信玄によって大きく変わる

人払いした広間には武田信玄と幸村を始めとする上田一族

そして俺と何故か名無しさんが呼ばれた

「ただ京のちょっとした有名なとこを案内するだけでいい。夜にはお前だけ実家に帰ってゆっくり休める」

「え…ええ…でも…」


名無しさんがなかなかいい返事を出せないのには理由があった






「…その方って信玄様の大切な…いえ武田にとってこれから重要になってくる方なのですよね?そんな方に私を案内役だなんて…務まるのでしょうか…」



武田にとってこれから有益な形で重要になってくる人物


そんな相手に侍女一人とは、武田信玄もつくづく食えない男だ



「それについては心配ない。誰だってむさーい男に付き添われるより、若くて美しい女が隣にいた方がいいだろう?」

「むさ…っ御屋形様っ!是非この幸村も共に!」

「落ち着きなよ幸村」

「あの…信玄様は行かれないのですか?」

「俺は立場上城を空けることはできない。いつあの女男に寝首を掻かれてもおかしくないしな!」


豪快に笑う信玄さんに、未だ不安を隠しきれない瞳でたじろぐ名無しさん



「差し出がましいことを言うようで申し訳ないのですが…それこそ幸村様など、側近の方が行かれた方が…?」

「いや、駄目だ。幸村や他の顔を知られている側近が動いたんじゃ余所にわざわざ武田が動いていると教えているようなもの。なるべくギリギリまで水面下で動きてぇしな」

「ふーむ…なるほど…」

「幸村…相変わらずお前は武術と戦以外のことは、からっきしだな」

「ははっ…大変申し訳ございません…日々精進して武田に全力を尽くせるよう色々書物を読んではいるのですが…」

「え?あれちゃんと読んでたの?てっきり枕にしてるのかと思った」

「んなっ!?失敬な!ちゃんと一度は目を通している!それでも…まあ…たまに睡魔に勝てぬこともある…」


がははと豪快に信玄さんが笑い終えたところで、名無しさんが何か覚悟を決めたようにキッと皆に向き直った





「わかりました。微力ながらこの私…喜んで引き受けます!」




わかっていたかのように、信玄さんは目を細めてその笑みを更に深める






「ああ、頼んだぞ名無しさん」




























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