恋乱W

□良薬は口じゃなく腰に苦し
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「いてて…」


痛む腰をさすりながら、漸く洗濯物を干し終える

そもそも何故こんなに腰が痛むのか?


原因は勿論、才蔵さんにあるのだ

雲ひとつない空を見上げながら昨夜のことを思い返すー…



「んっ…やぁっやめ…っ!」

「だーめ。まだ足りないでしょ?」

「もっ…むっ!りぃっ…」


(わわ私ってば…こんな明るいうちから何考えてんのっ!)


勝手に一人で思い出して、ひとりでに赤くなった頬を両手でパチン!と抑える


(それにしても…)


「痛い…」

ズキズキと痛む腰

段々と酷くなっている気がする

もはや歩くのも辛いような…



「ど…どうしよう…」



これでは夕餉の仕度どころか、自力で部屋に辿り着くかさえもわからない


助けを求めたいところだが、この腰が病んでいる原因を突き止められるのも何だか恥ずかしい

幸村様なら原因はわからないかもしれないが、間違えて梅子さんや松子さんに知られたら…

キャーキャー騒がれるに違いない


(これは…才蔵さんを呼ぶしか…)


私はなるべく小さな声で

そして才蔵さんなら気付いてくれるほどの大きさでその名を呼んでみる


「才蔵さーん…」













「…………」


反応がない

(声が小さすぎたかな…)





「才蔵さーん…」


先ほどよりも少し大きめの声で名を呼んでみると…


「才蔵さんなら出かけていますよ」

「きゃあああ!!」


ストンッと突然目の前に降り立った清広さんの姿に驚いて、思わず悲鳴をあげてしまう


「すみません、驚かせてしまいましたか」

「あっ…いえ…大丈夫です…」


ドクドクと波打つ心臓

ズキズキと痛む腰


驚きのあまり少しだけ仰け反ったせいで、私の腰はもう限界だと悲鳴をあげていた

よくわからない冷や汗が額から流れ落ちる


「…腰が痛むのですか?」

「っ!」

まだ何も言っていないのに…

清広さんには全てお見通しらしい


「実は…ハイ…」

隠し通せないと悟った私は素直に痛むということを伝えた

清広さんは何か思考を巡らせて

あーー…と合点がいったような、全て繋がったと言わんばかりの表情で私に向き直る

(そんな…納得されるのも結構恥ずかしい…)

顔に熱が集まってくる

"昨夜激しく愛されました"と言っているようなものだ

(穴があったら私を埋めて欲しい…)


「部屋まで運びます」

「…お願いいたします……ひゃっ」

私が返事をすると同時に清広さんはヒョイと私を横抱きにする

首に捕まらないと落ちてしまいそうになるため、清広さんの首に腕を回すと

清広さんの長い漆黒の髪の毛が鼻をくすぐった


「くちゅんっ!」

「あ…すみません。鼻に入りましたか?」

「あ…いえ、大丈夫です。こちらこそすみません…」

清広さんとこんなに密着したことなど勿論あるわけがない

というかむしろ、才蔵さん以外の男性と密着したこともほぼないのだ

(弥彦として奉公に来た時、男と思っていた幸村様とならあるけど…)

無駄に高鳴る胸を抑えながら、清広さんの顔を見れずに、近づく部屋ばかりを見ているしかなかったー…





















「こちらでよろしいですか?」

「はい、ありがとうございます」

部屋に着くなり、清広さんはゆっくりと私を褥に下ろしてくれる

道中もなるべく腰が痛まないようにゆっくりと歩いてくれて
清広さんの優しさを感じられた

「今日は安静にしていた方がいいでしょう。才蔵さんの帰りは恐らく早くても朝方かと…」

「そうなんですか…」

きっとまた任務なのだろう

チクリと胸が痛む

私は才蔵さんのことを何も知らないんだなと思い知らされる瞬間

仕方のないことだとわかっていても、やはり少しだけ胸が痛むのだ

私の胸中を察したように清広さんが口を開く

「…腰痛に効く薬などはお持ちですか?」

「え……すみません…実は…持ってないんです…」

元より腰痛とは無縁だった私

腰が痛む日が来るなんて思ってなかったため、腰痛の薬は用意していなかったのだ

かと言ってこの体では城下に買いに行くのも難しい

「…私は一応持ってはいるんですが…」

「えっ!清広さん持ってるんですか!?」

何故か罰が悪そうに視線を下げる清広さんと、パッと表情が明るくなる私

「その…肌に直塗りする薬草なので…」

「じっ…直塗りっ…」

清広さんの言葉を聞いてカッと顔に熱が集まる

(じっじっ直塗りって着物を脱がなくちゃいけないってことだよね!?)

「…明日才蔵さんが帰って来るまで待ちますか?それか他の女中に…」




















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