恋乱W

□何度でも二人は恋に落ちる
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「んっ、はぁ…わ…か…」


月明かりの中、嬌声を上げる名も知らない女

息を荒くし、頬を蒸気させて
ただただその快楽に身を委ねる


「んぁっ!はっ…くち…口づけを…」

しきりに口付けを求める彼女の言葉を無視しながら俺は何も言わずに律動を繰り返した

「ぁっ!はぁん!はげし…もっ…ゆっくり…っ!」

嫌がる素振りを見せながらも顔はもっとと求め感じている

俺は自然に目を瞑って

ある女の姿を想像しながら腰を打ち付けた






"んっ…才蔵っ…さ…っは…"


暗くてもわかるほどに身体を火照らせて

潤んだ瞳で俺を見つめて

弓のように腰をしならせる


たくさんの女を抱いても

いつも頭を過るのは彼女の顔


これをする度に目を瞑っては彼女を思いながら

吐き出し場所を見失った激情を名も知らない女の中へ注ぎ込む

きっと明日にはこの女の顔さえも忘れているだろう

俺を本当に心の底から幸福で満たしてくれた女はもういない


「んやぁっ!はっ…ぁん!」


最後の一突きと言わんばかりに腰を打ち付けると

意識を失った女にパサリと着物をかけ、その場を去ったのだったー…






















あれはまだ桜が咲いていた頃だった


「才蔵さーん!」

上田城が見下ろせる丘の上の木に腰掛けながら、まどろむ俺を
この世で一番愛しい女の声がハッと夢うつつから現実に戻す

「才蔵さん!やっぱりここにいましたか!」

「…また来たの」

「えへへ…でもちゃんとお団子も持って来ましたよ!」

「へぇ…花見でもする気?」

「はいっ!お花見しましょう!」

「飽きないね…お前さんも」

やれやれと言わんばかりに下に降りると嬉しそうに微笑みを浮かべる名無しさん

心を通わせるということは、こんなにも心地いいものだったのか

名無しさんと想いが通じ合ってまだ二月程…

今まで何の感情も持たなかった俺の身体にポッと灯りが灯って

人並みの体温を持ったような

やっと人間になれたような

感じたことのない想いが次々と俺の中に入ってくる


今の俺は紛れもなく、ただの"男"で

一人の"男"として彼女をただひたすら愛していた


「はいっ!どうぞ!」

「ん…何か今日の団子はいつもと味が違うね」

「はいっ!実は桜風味にしてみたんです!お味はどうですか?」

「悪くない」

口の中いっぱいに広がる優しい甘さは名無しさんそのものを表しているようで

素直じゃない俺は美味しいとは言ってあげられずに、ただ出された団子を頬張り続ける

その様子を嬉しそうに隣で見つめる名無しさんに気付かないふりをして

桜の花びらが舞い散る丘で

柄にもなく"来年もまたこうしていれたらいい"なんて考えながら

二人で上田城を眺めていた


本当に美しい俺の想い出


もうきっと彼女がこれを思い出すことはないー…




























幸せな日々なんて長く続く筈もなくて

俺はどこかでいつかこの日が来てしまうのをわかっていたのかもしれない



月明かりに照らされた艶めいた肌に舌を這わせて

ぷっくりと膨れ上がった紅い蕾を口の中に含んで転がしてやれば

何とも心地いい甘い声が俺の鼓膜を揺らす

心が通じ合ったら、次は肌を重ね合わせたいと思うのは至極当然のこと

けれど俺のような者がそんなことを思うのは絶対許されるわけがなくて


この時俺は深い後悔と幸福の狭間にいた



「痛い…?」

「んっ…ぃったくな…っ!」

「無理しなくてもいいから…」

「だっ…ぃじょ…」

(無理って言われても止められる余裕なんてないけどね…)

愛液を惜しげもなくトロトロと溢れさせる蜜壺に己をゆっくり沈めて

身体を駆け抜ける快感を噛み締める

痺れるような気持ち良さに、はぁと息を吐いて

なるべく痛みを感じないようにゆっくりと律動を開始させると

蜜壺がぎゅうと強く俺を締め付けた


「んっ…はっさいぞ…さっ…んっ!」

その小さな紅い唇を塞いで

深い深い口付けを交わす

舌をゆっくりと絡めながら

痛い方に意識がいかないように


「んっ…ふぅ…」

くちゅくちゅと淫らな音と名無しさんの口から漏れる甘い声

己の思考なんてもう既にどこかへ飛んでいたんだ

いや、もしかしたら初めて会った時から既に飛んでいたのかもしれない

俺の下で妖艶に乱れる女を

労わりながら進めることが出来なくて


もう己の欲望のままに

気を失ってしまうまで

俺達は一晩中愛し合ったー…

























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