怪盗X

□春は甘い季節
1ページ/4ページ




「皆飲み物は揃ったかな?じゃあ、カンパーイ!!」


「「カンパーイ!!」」


ボスの掛け声で皆高々にビールを挙げ乾杯する


桜がヒラヒラと舞い落ちる4月


BFのメンバーで花見をしようと宙君からの提案で今日この日を迎えた



「それにしてもボス、いい場所とれましたね!」

「でっしょー!?大変だったんだから!昨日の夜から徹夜だよ!」

「ボス徹夜したんだー?だから目の下にそんなにクマ作ってるんだね!」

「えぇ!?まじ!?」

「そういやパンダみたいになってるな」

「パンダ…おじさん…」


(せっかく徹夜までしたのに可哀想なボス…)


「ハハッ!まあ、パンダになってるのはボスだけじゃないけどな!」


チラリと隣に座る拓斗さんを見ると、パンダ顔負けのクマを作って

うとうとしながら静かにビールを飲んでいる


皆の視線が自分に集中していることに、漸く気付いた拓斗さんは

ギロリと睨むと、いつもの憎まれ口を叩いた



「何だよ。こっち見んなし。キモチワリー」

「…どんなに寝不足でも口は元気なんだね、たっくんは…」

「拓斗の憎まれ口がなくなったら、拓斗じゃないだろ!」

「それもそーだな」

「ウルセー…」



皆で笑い合うと力なく拓斗さんは悪態をつく


どうやら本当に眠いらしい



(ここ1週間会社に缶詰めで仕事してたみたいだし…)



疲労した体を引き摺って花見のために、わざわざ顔を出したのだろう


今にも閉じそうな瞼を一生懸命開きながら、ビールをちびちび飲む姿がちょっと可笑しくて


そして可愛い


(子供が夜更かししているみたい…)



何だかんだ言いながら、ちゃんと皆のこと考えているんだなあ…



「拓斗さん、大丈夫ですか?」

「ん…」

「何か食べます?」

「…ジャージャー麺」



今日はBBQ

勿論、ジャージャー麺などない


「流石にジャージャー麺はないですよ…」

「はっ?ジャージャー麺ねぇのかよ!ヒゲ!役立たず!」

「ガーン!!」

「ガーンって口に出して言う人いるんだ」

「ほっとけ宙。天然記念物だから」

「拓斗さん…今日はジャージャー麺我慢してください」

「…………」

「ハハッ!拓斗も名無しさんには弱いな!」


大人しくなった拓斗さんに、適当に盛り合わせた肉を置くと

ふて腐れたように顔をフイと逸らしてゴロンと横になる


(拓斗さんやっぱり疲れてるんだな…寝かせてあげようっと…)


持ってきたシッフィーちゃんのブランケットをフワリとかけて

ワイワイと盛り上がる皆の中に入った





「それでさーその時のリキ君ったら…」

「おい、その話はもうやめろよ」

「たまにはいいじゃないか!エリート柳瀬の黒歴史!」

「たまにはって…いっつもその話してるだろ…」




お酒もグングン進んでいき、皆いい感じにほろ酔い気分になってきた



書く言う私もいつもと違った解放感と、楽しい話に少しずつ目が回ってきて

酔い醒ましに水をチビチビ飲みながら、皆の話を聞く


隣で横になっている拓斗さんを見ると、静かに寝息を立ててぐっすりと眠っているらしかった



上下するシッフィーちゃんのブランケットを見てクスリと笑いを溢すと


ガクンと横から重みがのし掛かる




「ゥィー…」

「わっ…柳瀬さん…重いですって!」

「急にきたね…リキ君」

「おい、名無しさん!ちゃんと飲んでんのか?これ水じゃねぇか!」

「飲んでますって…と、とりあえず退いて下さい…重いっ!きゃっ…」


体勢が崩れた柳瀬さんはそのまま私の膝にゴロンと横になる



「あー…いい感じ…」

「あーあ…こうなったら、もう駄目だね」

「柳瀬さんっ!」

「リキくーん、たっくんに見られたら大変だよ?」

「らいじょーぶだってぇ…」

「……寝た?」


柳瀬さんも静かに寝息を立てて、私の膝の上で眠ってしまったらしい



「ど、どうしよう…」

「静かに足を抜けば大丈夫じゃない?」

「あ…そうですね…失礼しまー…」


しかしガッチリと膝を掴まれて、足を抜こうにも

なかなかうまくいかない


それどころか動く度に柳瀬さんの力がどんどん強くなっていっているような気がする


「ぅ〜〜柳瀬さん…離して下さ…」






「何してんだよ」












*
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ