怪盗X

□聖なるX'mas
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寒い季節がやってきた

街がキラキラと綺麗に彩られて、美しい輝きを放つ



拓斗さんと付き合うようになって初めて迎える冬


もう少しでX'masだ





「んー…何も思いつかない!」






近頃X'masプレゼントのことで、頭を悩ませていた私は、いつもの店黒狐でレモンサワーを片手に項垂れる



「たっくんへのX'masプレゼントかあ〜確かに難しいね〜」

「拓斗のことだから新しいハードとかが一番喜ぶんじゃないか?」

「拓斗は常に最新のハード持ってるだろ」

「じゃあさ、名無しさんちゃんにリボンかけて…プレゼントは私!みたいな?」

「もう手に入ったんだから今更だろ」


「……………」



面白がっているのか、真剣に考えてくれているのか皆が様々に口論を交わす



ここ何日か黒狐に通い、この話題について相談したが結局いつも答えが出ないまま終わっていた



「って言うかたっくんは今日も残業?」

「あ、はい…。何か最近忙しいみたいで…」

「拓斗のことだからX'masとか関係ねーって思ってるかもな?」

「言えてるー!は?俺別にクリスチャンじゃねーし!とか言いそう〜」



(たっ…確かに…)



氷が溶けかかったレモンサワーをグビッと一気に流し込むと、一足先に家に帰ることにした








 




(プレゼント…プレゼント…あー!やっぱダメだ!)


適当なプレゼントが思いつかない


拓斗さんが喜びそうなものなんて、ジャージャー麺くらいしか…


いや待てよ…ここは本気で私にリボンをかけて…



宙君の冗談さえ、本気にしてしまうほど私は悩んでいた




せめて少しでも拓斗さんと話ができたら、ちょっとはヒントがもらえるかもしれないのに…



寝る間もなく仕事場に缶詰の拓斗さんは電話に出る時間も惜しいのか、


"仕事が忙しいから、しばらく連絡とれない"というメールだけを私に送って、それっきりだ




(拓斗さんにとっては、恋人と過ごすX'masなんてどーでもいいのかも…)





溜め息をつきながら、暗く寒い部屋のドアを開けたー…

















日曜日


相変わらず拓斗さんからの連絡はないまま


今日こそ拓斗さんのプレゼントを買おうと街にやってきたのはいいが、すれ違うのは幸せそうなカップルばかり



私だけ取り残されたみたいで寂しさを感じる



すると、とある店の前を通りすがろうとした時、ウィンドウ越しに見覚えのある金髪が見えた




(拓斗さん…?いやいや、まさか…だって仕事が忙しいって…)



何やら楽しそうに女性と話している


その女性の指に何度も違った指輪をつけて悩む拓斗さんらしき人



するとクルリと向きを変えて、こちら側に歩いてきた



(やばっ…!)



咄嗟に近くにあったツリーに隠れる


出てきた人をこっそり覗くと、間違いなく拓斗さんだ





(ウソ…)





あまりの衝撃に私はただ、去っていく拓斗さんの背中を見送るしかなかったー…
















どうやって家に帰ってきたかわからないほど心にポッカリと穴が空いたまま、ソファーに腰を下ろす



テーブルの上に無造作に投げた携帯には何の知らせもない



ここ最近忙しいと言って連絡をしてこない拓斗さん




今日一緒にいた女性







「浮気……」




乾いた声で呟いたその言葉は私しかいない部屋に消えていく




「くっ…ふぅ…」




言葉にすると改めて辛くて、苦しくて、涙が溢れた


私の想いは拓斗さんにとって重荷だったのだろうか?


面倒くさいと思われた?


もう何もわからないよ…



「拓斗さん……」




その日はそのまま泣きつかれたのかソファーに沈んだまま眠ったー…













結局拓斗さんからは何の連絡もないまま24日のイブの朝を一人で迎える




「有休無駄になっちゃったな…」



拓斗さんと迎えるつもりでとった連休


こんなに寂しい気持ちで迎えるなら仕事に出れば良かった…


仕事をしていれば、こんなに拓斗さんのことを考えなくて済んだのに





〜♪〜♪〜♪







カチャカチャとコーヒーを淹れているとテーブルの上に置かれた携帯が軽快なメロディを奏でた



(っ…拓斗さんだ……)





"今から行く"





それだけ書かれた画面をぼんやりと見つめる




もしかして今日別れを告げられる?


これから拓斗さんとサヨナラをするために、会わなきゃいけないの?


























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