怪盗X

□乙女ゲームの彼は
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「ねっ!絶対面白いから名無しさんもやってみてよ!」

「えぇ〜〜?それって俗に言う乙女ゲームでしょ?私別にそんな飢えてないし…」

「彼氏とゲームは別!それにあんたの彼氏ってあま〜〜い言葉を囁いてくれるようには見えないけど?」

「うっ…それはそうだけど…」



(でも拓斗さんだってたまには…)



「インストールしてプロローグ読むだけでいいからさ!お願い!招待送るから!」

「…はーんさては、いっぱい招待すると蘭子が何か貰えるとかいうやつでしょ?」

「まぁまぁ!細かいことは気にしない!じゃあ頼んだよっ」

「あっちょっ…待って…」



(切れちゃった…)







「もー蘭子ってばいつも強引なんだから…」






スマホをいじりながら、さっきまで蘭子が熱弁していたアプリを検索する





「あった…天下統一恋の乱…」






早速インストールしていると、蘭子の招待IDが届いた





これを入れれば蘭子と友達になれるのか…



カチカチとIDを入れ、プロローグだけでもと思いストーリーを開始させる












(…意外と面白いかも)






もちろん出演キャラはイケメンだし、何より女の子の大好きなドキドキ感が堪らない



蘭子がハマるのも納得かも…




私は何となく見た目がタイプだったため、霧隠才蔵というキャラを目当てでアプリを進めていったのだったー…























(今日は3日ぶりに拓斗さんに会える♪)



ウキウキと喜びを隠しきれず、仕事帰りに拓斗さんの家の前までやってきた


インターフォンを押すと軽快なチャイムのあと、すぐに拓斗さんが出てくる




「…上がれば」




目下のクマがひどい


この頃仕事が忙しいと言っていたが、どうやらまともに睡眠もとっていないようだ



「お邪魔します…」




だけど睡眠より私を優先してくれたことが素直に嬉しい





早速部屋に入ると拓斗さんはコーヒーを淹れてくれた



「ん…」

「ありがとうございます」



温かいコーヒーを一口飲むと体が温まってホッと一息つく




「拓斗さん、随分寝てないような顔してますけど何日徹夜してるんですか?」

「…2日くらい」

「2日!?」


想像を越える長さに思わず驚きの声を上げた



2日も寝てないとなると何だか遊びに来たのが申し訳なくて、拓斗さんの機嫌を損ねないよう、なるべくソフトに告げる




「拓斗さん体壊すといけないし…私今日は帰りま…」

「ダメ」


やや被せ気味に断られ、負けずに反論しようとしたその時




「きゃあっ!」



ガバッとそのままベッドに押し倒され動きを封じられた




「俺の抱き枕…」



「えっ!?ちょっとまさかそのために…って寝てる…?」





拓斗さんは規則的な寝息を立てて、スヤスヤと寝ているようだ






「相変わらず恐ろしい程の寝つきのよさ…」





金色の髪の毛をサラリと撫でると、拓斗さん独特のシャンプーの香りがする








(疲れてるみたいだし、このままにしてあげよう…)









拓斗さんの抱き枕になりながらも、私はスマホを取り出し、お気に入りのアプリを起動させた








「お前さん意外とやるね」










(才蔵さんカッコいい…現実の彼氏はこんなこと言ってくれそうもないしね…)










アプリの中の彼につい夢中になる





姫修行をしたり、挨拶したり、模様替えしてみたりと意外にも忙しく、気付けば結構時間が経っていたらしい












「……何してんの」



「わっ!たっ、拓斗さん!起きてたんですか?」


「今起きた。つか、それ何?」





拓斗さんの視線は私のスマホの画面に釘付けになっている






「あ、これですか?この前蘭子に紹介されて…結構面白いんですよ」




そう言いながら物語を進める





「…何これ」


「ふふ。乙女ゲームって言うみたいですよ!最近結構ハマってて…っあ!」





拓斗さんは強引にスマホを奪い取ると、そのまま電源を落とした






「あ〜あ…途中だったのに…」


「お前、彼氏の前で堂々と浮気するとはけっこー根性座ってんな?」


「浮気って…ただのゲームじゃないですか…」


「ウルセー…もうこーゆーゲーム禁止…」



「んっ…」





そのまま近付いてきた綺麗な顔が私の唇を塞いで、じっくりと拓斗さんの温度に溶かされていく




























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