恋乱LB U

□未来へ続く結晶
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「なっ…才蔵さん何をっ…」


「何をって…いつもでしょ。酔ったお前さんが何度も何度も欲しいってせがんで…」


「そっ!そうか!大変だな才蔵も!」


「ゆっ…幸村様!お酒のことですよ!」


「当たり前でしょ。何のことだと思ったの幸村」



いつもの手口で幸村をからかうと、真っ赤になっていた顔がサアーと冷えて、ガックリと項垂れた



「…今夜は酒が回るのが早い…もう寝る…」


「あれ?まだ結構残ってるけどいいの?」


「いや…いい…また今度な二人とも…」


「あっ…幸村様…」



静かにパタンと出ていった幸村を二人で見送ると、名無しさんと向かい合って座る 



「もー…才蔵さんは…また幸村様のことをからかって…」

「名無しさん」



急に名前を呼ばれたことに驚いたのか、真剣な眼差しを俺に向けた




最近ずっと気になっていたこと












「最後にお馬が来たのはいつだ」






「えっ……?」







そう

俺が覚えている限り、ここ何ヵ月か夜の営みを断られた日はない


毎晩最奥に注ぎ込んだ激情




急に味の好みが変わった名無しさん




来ないお馬







導き出された答えは一つだった













「私のお腹に…赤子が…?」





震える手で自分の腹へと手を持っていく名無しさん


その体を優しく包み込むように抱き締めると、自分の手も震えていることに気が付いて自嘲気味に笑う










「元気な子生んでよね…」




嗚咽で声の出せない名無しさんは何度も腕の中で頷いた






俺達の愛し合った今までの月日が、ようやく形を成して名無しさんの腹に宿ったのかと思うと、胸の奥底から何かが込み上げてくるのを感じる





それが涙となってポタリと名無しさんの着物に染みを作った
















「俺の命をかけて、お前さん達を守るから……」





































「ん…?何これ?」


「どうした?」


「この箱の中に何か…」




カパっと古ぼけた木箱を開けると、埃が舞う



「けほっ…すごい埃…かなり古いみたい…」


中に入っているものを、そっと取り出してみると、何やら大量の本が入っていた



「何だろう…?何かのレシピみたい…団子?」


「あ、本当だ。団子のレシピみたいだね」


パラパラと冊子を捲ってみるが、どのページにも色々な種類の団子のレシピらしきものが、書かれている



「…あなたのご先祖様って団子屋さんだったの?」


「まさか。言い伝えでは忍だったって聞いたけど?」


「えぇ?忍者なのにどうしてこんなに団子のレシピが?」


「さあね…きっと好きだったんでしょ」


ふと視線を戻すと木箱の奥に何やら丁寧に折り畳まれた紙を見つけ、広げてみる



そこには幸せそうに寄り添う二人の絵が描かれていた


優しそうな顔をした女性のお腹は大きい




隣に佇む男性は、何となく私の旦那に似ているような気がした







「これ…ご先祖様の絵じゃない?」


「…何かサインが…」



指の先を目を凝らして追うと、紙の隅に小さく"佐助"という文字がうっすらと見える




「佐助って人が描いた似顔絵なのかな?」


「さあ…もう大掃除終わりにしよ。妊婦の体にこの寒さは堪えるよ」



差し出された手をとりゆっくりと家へと戻る















何世紀もの時を超えて、血は繋がってきた



きっと幸せになる



してくれる





私達が受け取ったバトン





(絶対次に繋げますね…)





そう心に誓う






あの似顔絵に描かれた二人がそうしてきたように…




私達はこれからを歩き出すー…

























End


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