恋乱LB U

□全ては愛し君のせい
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最近の才蔵さんは少しだけ…いや、かなり機嫌が悪いらしい


「才蔵!朝の鍛練を…」

「やだ」

「お前な…いい加減に…」

「やるなら一人でやれば。忍の流儀と違うし」

「…………」





またある時は…



「才蔵さんお団子を…」

「いらない」

「え…でも、せっかく…」

「俺が頼んだことじゃないでしょ?そんなので俺を手なづけられるとでも?」

「……………」





またまたある時は…



「才蔵さんお出かけですか?」

「まあね」

「えっと…どちらに…」

「お前には関係ないでしょ」

「………………」

「才蔵!今の言い方は…っ…くそ…」





と、まあこんな感じでかなり機嫌が悪い

最初こそ悲しみに暮れていたが、人は少しずつそんな対応にさえ、順応していくものなのか…慣れ始めていた


最も、何の理由もなく才蔵さんは怒ったりしない

原因はわかっている

それは一週間程、前のこと…










 

「幸村様、お茶が入りました」

「おぉ、ありがとな」

自室で珍しく本を読まれている幸村様にお茶をと頼まれたので、運びに行った

「きゃっ…」

すると積まれていた本に躓いて、お盆に乗せられたお茶が宙を舞い、パシャリと幸村様の召し物を濡らしていく

「うおっ!!」

「あぁっ!すっすみません!!」

慌てて乾いた布を当てるも虚しく、見事に幸村様の袴に染みを作ってしまった

「幸村様、すぐに脱いで下さい!今洗えば染みは取れます!」

「えっ…別に大丈夫…」

「私の責任ですから…ほら、早く!」

「ぅわっ!ちょ…待て…っ!」

焦った私は有無を言わさず幸村様の召し物を素早く脱がす

自分のせいで召し物を汚してしまった…その思いからどんなことをしているかまでは気が回らなかったのだ

「ちょちょっ!!待て名無しさん!落ち着け!俺はだいじょ…」

幸村様はふいに体を捻り、その拍子に裾を掴んでいた私の体が強く引っ張られた


「きゃぁあっ!」




「いてて…おい、大丈夫…うわ!」

「ひゃあ!」


私の体を咄嗟に抱き留めようとした幸村様と共に、床に転んだようだ

驚く程、近い距離にある幸村様の顔を見て思わずお互い飛び退く

「すすす、すみません…」

「いいいいいや…ここっちこそ…」


二人の間に気まずい空気が流れる

才蔵さんの体とは違い、男らしく逞しい幸村様の胸板


才蔵さんの体も確かに力強くて、男らしいけど、もっとしなやかで…


(って、こんなこと考えてる場合じゃなかった…)


「幸村様、あの…本当に染みになっちゃいますので…」


と、袴に手をかけた時


「ん?幸村様。何か詰め込んでいらっしゃいます?」

「わぁあ!馬鹿!触るな!」

「でも…貴重品なんじゃ…?出さないと…」

「わっ、ちょ…!刺激しないでくれ!本当に貴重品なんだ!!」


「あ…」



そこで、漸く何を触っていたかに気付く


(ゆっ…幸村様の…!)





「…本当に申し訳ございません…」


落ち着きを取り戻した幸村様に向かい深く謝罪する

あろうことか、幸村様のアレを詰め物と勘違いした上、触ってしまうなんて…

幸村様でなければ打ち首だったかも…


「いや…何…アレだな…反応してしまった俺が悪いわけだし…気にするな」

「でも最初にお茶を溢したのは私です…」

「それはそこら中に本を散らかしていた俺が悪いわけで…」

「でも…本当に申し訳ございませんでした…」

「気にするな。お前は悪くない、こちらこそすまなかった」


(幸村様はお優しいなあ…)

私のせいなのに、気遣って下さってるんだよね…

「幸村様…ありがとうございます…」

「いや…その…何だ。さっきのは早く忘れろ…おお俺も一応男なんだからな!」

「はい!存じております!」

「えっと…」

「ふふ…」


言葉の続かない私達はただ笑い合った

その後幸村様の袴の染みは、ちゃんと取れて一先ずホッとする


(良かった…綺麗になって…)



「これから洗濯?」

「才蔵さん」


耳馴れた声に振り返ると、ユラリと才蔵さんが立っていた


「…それ、幸村の?」

「え?あぁ、私がお茶を溢してしまって…」

「へぇ」


さして興味無さげに短い返事をする彼は欠伸をしながら、縁側にストンと腰を下ろす



(あの事件のことは秘密にしとこ…)


幸村様のアレを詰め物と勘違いして触ったなどと、才蔵さんに知れたらどんなにからかわれるか…


「ねぇ」

「はっはい!」



「幸村のは俺のよりデカイから大変だったでしょ…」



「はあっ!?!?」






























*
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