恋乱LB U

□悪戯心
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「才蔵さん、あの…ん?」



「……スー……」




(寝てる…)



ポカポカと温かい陽射しを浴びながら才蔵さんは縁側でスヤスヤと眠っていた


ここ最近任務が続いていて疲れているのだろう



(寝かせてあげよっと…)



才蔵さんの近くにそっと座り、あまり見ることのない寝顔をじっと見つめる



光を浴びてキラキラと輝く銀髪の髪の毛、切れ長の瞳、陶器のようにツルリとした肌


まるで美しい彫刻のように全てが整っている


無造作に投げ出された手にそっと触れてみると、一瞬だけピクリと動いて、また力が抜けた


男らしい骨ばった手なのに指は細く長い



(いつもこの長い指が私の中に…)




ふと頭の中に浮かんだ映像をかき消すように頭を振る





(馬鹿!真っ昼間からそんなこと考えるなんて…!)



火照った頬を抑え、呼吸を整えると、パッとあることを思い付いた










才蔵さんにいつも翻弄されてばかりいる私


たまには私が才蔵さんを困らせたい


余裕綽々の才蔵さんの参った顔を見てみたい…



私の黒い考えが段々と形になって、笑みを溢す






(こちょこちょをしてみよう!!)





才蔵さんが笑い転げる姿なんて、恐らく誰も見たことがないだろう


才蔵さんの"初めて"を私が一番最初に知るなんてちょっと嬉しい!!






「…失礼します…」




一応小声で眠っている才蔵さんに断ると、そっと脇の下に手を入れて、遠慮がちに指を動かしてみる









「………………」


「………………」




あれ?反応なし?力が弱すぎたかな?


才蔵さんは動く気配もなく、先程から規則的な寝息を立てている




(よーし!もうちょっと力を入れて…)




さっきよりも強めに脇の下をくすぐると、ピクリと少しだけ才蔵さんの表情が動いた


もしかして効いてるのかも?




調子に乗った私は大胆にも才蔵さんの上に跨がり、なるべく体重をかけないよう少しだけ腰を浮かせて、更に力を込めて才蔵さんの脇をくすぐった





「……っ…」


「!」




先程よりもハッキリとした反応が表れる



(やった!くすぐり作戦は成功かも!)



「ふふ…」


やっぱり才蔵さんにも弱点はあるんだなあ…


脇が弱いなんてちょっと可愛いかも…


ちょっとした優越感に浸っていると、私を呼ぶ声が聞こえた



「名無しさんー!どこー?」



(佐助君だ…)



才蔵さんを起こさないよう、そっとその場を離れると佐助君の元へと急いだー…






















「ん?名無しさん、買い物か?」


「幸村様、はい。今から夕げの買い出しに…」


「才蔵は?いないのか?」


「いることはいるんですが…気持ち良さそうにお昼寝されていたので、起こすのも可哀想だなって…」






「いるよ」





「っ!?才蔵さん!?」



いつの間に背後に立っていたのか、私は驚きの声を上げて後ろを振り返るといつもの笑顔で才蔵さんが立っていた



「才蔵さん、起きたんですか?」


「何のこと」


「何のことって…さっき…」


「丁度良かった才蔵。お前も名無しさんと一緒に買い物に行ってこい。女一人では荷物が多すぎるからな」


「了解」



涼しげな瞳を私に向けてスタスタと歩き出す才蔵さんに遅れを取らぬよう慌ててついていく




















「才蔵さん、あの…」


もしかしたら才蔵さんのことだから、さっき悪戯した時起きていたのかも?

だけどもし本当に寝ていたのなら、私の謝罪によって悪戯したことがバレてしまう


そんなことを知られたら、どうなるかわかったもんじゃない

きっと何十倍にもなって返ってくる…



(けど…)



何も言ってこないのだから、きっと気付いてないのかもしれない


よし!ここは私も知らないフリを通そう!


そう心に決めて"ごめんなさい"をグッと飲み込んだ





「何?」


「あっいえ…何でもないです」


「…そ」


さして興味無さげに返事をすると、目当ての物を次々と買い込んで、ようやく城へと帰宅したー…


























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