恋乱LB U

□変わらぬ想い
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「名無しさん、何してるんだ?」


「あ、佐助君。実は明日から京の実家に里帰りするから荷造りしてたの」


「えーじゃあ明日からしばらくいなくなるのか…お土産よろしく!」


「勿論。楽しみにしててね」



久しぶりの里帰りに胸が踊る

何ヵ月ぶりだろう…


ここでの生活も楽しいが、たまにふとした瞬間お母さんや弥彦に会いたくなる時がある


才蔵さんが一緒にいてくれなかったらきっと毎日帰りたいと思うに違いない




「先生も一緒に行くのか?」


「えっ…どうだろう…何も聞いてないからわからな…」

「行くよ」



いつの間にいたのか、背中から聞こえた才蔵さんの声に振り向くと、いつもの笑顔を浮かべて立っていた




「才蔵さんも一緒に行ってくれるんですか?」


「女一人で京に行かせるわけないでしょ」


「えー!先生もいないのかあ…」


しょんぼりと肩を落とす佐助君をなだめるように、背中を撫でる


「すぐに帰ってくるよ。お土産いっぱい買ってくるから楽しみにしてて?」


「…わかった。先生方がいない間、俺が留守を預かる!」


「ふふ。頼んだよ、佐助君」









そして、待ちに待った里帰りの日の朝が訪れた




「名無しさん、才蔵。気を付けてな!」


「はいはい」


「行って参ります!」




幸村様と佐助君に見送られて、二人で出発した私達は他愛もない話をしながら順調に歩みを進めた




「佐助君のお土産は何がいいですかね?やっぱり食べ物かな?」


「気早すぎでしょ」


「でも今のうちに検討つけとかないと、迷って結局変なの買っていきそうなんですよね…」


「だろうね」


「才蔵さんも真剣に考えてくださいよ…」


「お前さんからもらったものなら、佐助は何でも喜ぶと思うよ」



優しい笑みを浮かべて言った才蔵さんは、いつもより穏やかに見える


(久々のお休みだから才蔵さんも少しは気を抜けるのかも…)



才蔵さんの柔らかな雰囲気に、つい私まで嬉しくなる


きっと楽しい旅になるなあ…そう思ったその時だった






「あれ?名無しさんちゃんじゃないか」

























振り向いた目の前に立っていたのは、上杉謙信



「…それと忍者君」

「…ついでみたいに言うのやめてくれる?」



ハハハと笑ってごまかした上杉は、俺達に更に歩み寄ると名無しさんだけを見つめて改めて挨拶した



「久しぶりですね名無しさんちゃん。会うのは偽菊姫以来かな?」
  

「そうですよね。お久しぶりです。景勝様や菊姫様はお元気ですか?」


「うん。二人とも仲良くやってるよ。妬けちゃうぐらいにね…名無しさんちゃんも忍者君と仲良くやってるみたいだね」


チラリと俺の方に挑戦的な視線を向けた上杉


咄嗟に名無しさんの肩に手を回して俺の方にグイッと引き寄せると名無しさんは顔を真っ赤にさせて、離れようともがく



「お陰様で仲良くやってます。ご心配なく」


「ちょっ…才蔵さん!」


「やれやれ。すっかり警戒されているみたいだね…そんなに警戒しなくともとって食ったりしないよ?」


「どーだか」


「才蔵さんっ!…あのすみません…謙信様はお一人でどちらまで?」 
 

「俺は京までだよ。ちょっと羽休めにね」


「偶然ですね!私達も京まで行くんです!よろしかったら途中までご一緒にいかがですか?」


「嬉しいお誘いだけど…いいのかい?忍者君?」


「いいわけないでしょ。空気読みなよ」


「才蔵さん…」



そんな心配そうな瞳で見つめられると、何だか俺一人だけがヘソを曲げているみたいで居心地が悪い



「…勝手にすれば」


「さすがの忍者君も愛しい姫には勝てないようだね。これは思いがけず楽しい旅になりそうだ」


「ありがとうございます。才蔵さん」


「別に…ってかその忍者君っていうのやめてくれる?」



二人きりの穏やかな旅になるはずが、この男、上杉謙信によってバタバタとやかましい旅になることは…少しだけ予想していた












「それにしても綺麗になったね名無しさんちゃん。よほど忍者君に愛されているのかな?」


「うるさい」


「こんなことならあの時、君より先に手に入れるべきだったかも…」


「それ以上喋ったら今すぐ寝てもらうよ」


「まあまあ。才蔵さん…」



















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