恋乱LB U

□書きかけの想い
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最近密かな悩みがある


嬉しいような寂しいような…何とも言えないけれど、こんなに胸が苦しいのだから、やっぱり嫌なんだと思う



「あっ!来ましたわ!これ受け取って下さい!」



私のおつかいに付き合ってくれている才蔵さんに顔を赤らめながら、文を押し付けて去っていく可愛い女性



「……………はあ…」


「…最近増えましたね」




そもそも、こんな端整な顔立ちをしているのに何故今まで女性が寄り付かなかったのか


急に増えた才蔵さん信者に頭を悩まされる今日この頃

















「で、どうしてだと思いますか幸村様!!」


「というか聞く相手を間違えてるぞお前…」



帰るなり早々、鼻息荒く幸村様と佐助君を捕まえ、最近の悩みを相談してみた


幸村様程、才蔵さんと付き合いの長い方はいない!そう思い聞いてみたのはいいが…




「…そうですよね。幸村様に色恋沙汰のことを相談するだなんて」


「そうだぞ…ってオイ!何気に失礼ではないか!?」


「まあまあ。本当のことなんですから」


「佐助まで…聞け名無しさん。近頃の才蔵は表情が少しだけ優しくなった気がする。女子が話しかけやすくなったのは言わばお前のお陰ではないか?」


「私の…?」


「確かに名無しさんが来てから先生はよく笑うようになったな!」



そうだろうか?

元の才蔵さんを知らない私には、全くわからない



「才蔵はいい意味で人間臭くなった。これもきっと名無しさんの影響だろう。悪く考えないで、ドンと構えていればいいんじゃないか?」


「ドンと…」



幸村様に励まされて、立ち直れそうな予感がしたその時






「というか女子達は隣に名無しさんがいるのに、どうして恋文など渡してくるんだ?」



「「あっ……」」



同時に声を上げた幸村様と顔を見合わせる




「いっ…妹だと思っているとか?」


「妹っ!?」



確かに言われてみれば…


彼女達は隣にいる私が見えていないかのように、才蔵さんだけを見つめ、想いを伝えていなくなる
 

何も知らない人から見れば、確かに私は妹に見えているのかも…



容姿端麗の才蔵さんに、平々凡々の私



釣り合うわけがない



「……はぁ…」


「そっ…そう気を落とすな名無しさん!可愛い妹じゃないか!俺だって妹が欲しかったぞ!?」


「幸村様。それ名無しさんを余計に傷付けるだけなんじゃ…しかも妹じゃないし…」


「ちょっと背が小さくて、童顔なだけだ!可愛いと思うぞ!?」


「…お気遣いありがとうございます…」



(全然嬉しくないけど…)




結局何も解決しないまま、幸村様と佐助君と別れ、夕げの準備へと向かった

















「清広、これ処分しといて」

「はっ」


先程押し付けられた文の処分を清広に任せ、屋根の上にゴロンと寝転がる


以前の俺ならその場で"いらない"と突き返すところだが、隣にいる名無しさんが恐らくそれを許さないだろう


優しい名無しさんのことだから、きっと"せめて文だけでも受け取ってあげて下さい"とか言うに違いない



彼女以外の女子になど、全く興味のない俺は開けることもなく全てを清広に任せていた





目を閉じうつらうつらとしたところで、騒がしい声に目を開ける









(幸村、佐助、名無しさん…?)



何やらぎゃあぎゃあと騒いで、寝ようにも寝られない


出て行こうか迷ったその時、俺の名前が挙がってピタリと動きを止めた




(表情が優しくなった…か)




長年俺のことを見てきた幸村が言うのだから、きっとそうなのだろう


確かに名無しさんに出会ってから色々な感情を知った

人を愛しく思う気持ちも、誰かに嫉妬する自分も今まで知らなかった




名無しさんは正真正銘俺の恋人であり、これからも離すつもりはない



(何をそんなに心配してるんだか…)




すると夕げの準備のためか、名無しさんが去っていく




今夜、どうやって名無しさんに俺の持て余すほどの想いを教えてあげようか…



そんな良からぬことを考えながら、夜を気長に待ったー…



















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