One More Time

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第2Q終了。

10分のインターバルに入った。




「ふへーーー!!
ノド渇いた!!」



コガ先輩が疲れた顔でそう言った。
確かにこの試合、エース対決が何度もあって休む暇がない。
見ていても緊張感が伝わってくる。



「確かに会場のこの熱気…確かに飲み物ほしいわね」

「…なんか買ってきましょうか?」

『あ、私も行きますよ!』



テツヤと私がそう言うと先輩たちは次々とドリンクの注文をしてきた。
い、いっきに言われても…。
中にはビールと言ってくる人も。
誰なんだ一体。



「てかもう一年全員買い出し!!」



は〜〜〜めんどくせ。

結局一年全員で仲良く買い出しに行くことになりました。









「ちくしょどこ行ったあのバカ…」

「2秒ではぐれたな」



さっそくテツヤがいなくなったのはお約束。
ただでさえ影が薄いのに人混みに紛れたらそりゃわからないわ。



『私テツヤ探してくるから買い出しよろしく!』

「はっ!?おい一人で…」

『だいじょーぶ!なんとなくわかるから!』

「なんとなくって…」

『あ、フリ!私ポカリね!』

「え、あ…行っちゃった」








って、出てきたものの。
この会場意外と広いのね…。
でもそんなに遠くは行ってないはず。





『どこかなぁ…』

「翼っち?」

『……え?涼太?』



名前を呼ばれた方に振り向くと、そこには涼太がいた。



『……びっくりしたぁ…』

「こんなとこで会うとは思わなかったッスね」

『まさかだね。…ていうか試合始まる前に大輝とこっち見て笑ってたでしょ!』

「え?あー…そうっすね。翼っちがアホ面してる〜ってね」

『え!?失礼だよそれ!』

「ははっ、ごめんね」

『もう…』



………

少しの間が空いた。
そのあと目が合ってお互いにくすっ、と笑った。



「なんか、ちょっと安心したッス」



涼太はそう言った。
その表情は穏やかだった。



『急にどうしたの?』

「ん?いやぁ、翼っち、泣いてるんじゃないかと思って」

『…え!?なんで!?』

「だってさ、中学のとき、オレと青峰っちと翼っち、よく一緒にバスケしてたじゃないッスか。
翼っちはこの繋がりを大事にしてくれてたと思うからこの試合つらいんじゃないかなって」



涼太がそんなことを考えてくれてたなんて、驚いた。
泣いてはないけど、確かに複雑な気持ちではある。
始まる前はこの試合を観たいけど観たくないと思ってた。



『涼太の言う通り、つらくないって言ったら嘘になるよ。
仲良かったのにただでさえ喧嘩別れみたいな離れ方して気まずかったわけだし。
でもいつかこうなることは分かってたし、またこういう機会は必ずくる。
それに私がつらい、なんてそんなこと言える立場じゃないよ」



笑ってそう言った。

きっと、みんなと気まずい別れ方をしなければ、
笑って中学を卒業できていれば、
こんなに複雑な感情を持って試合を観戦することはなかったのかもしれない。

みんなとの記憶があの楽しかった頃で止まっている私にとっては、
今日の涼太の大輝のコピーは、人が変わってしまったようで少し怖かった。
もうあの頃には戻れないのだと実感した気がした。
涼太は前に進もうとしている。
それなのに私はまだ過去にすがってる。
そう思わされてならなかったのだ。

こんな弱い私につらいなんて言う資格はない。



はぁ、と涼太は軽くため息はついた。



「今までそんな難しいこと考えてたんスか?」

『そ、そーだけど…』

「ならその考え、捨ててくださいッス。
翼っちには笑っててもらわないと困るから」



にっ、と涼太は笑った。



「だってほら、泣きながら試合見られるより
笑って見てくれてたほうがやる気でるしさ」

『ふふっ、ずっと笑いながら試合見てる人もおかしけどね』

「それもそーッスね。
…そうやって笑ってて」



そう言ったあとにぽんぽん、と二回頭を軽く触るとじゃ、と涼太は行ってしまった。



「あ、そうだ。黒子っちならその先に行ったッスよ」



涼太にそう言われて私は本来の目的を思い出した。



『…ありがとう涼太!試合、頑張ってね!』



そう言って私は涼太に言われたほうへ走った。



涼太に触れられた頭に手を置いた。
なんだかそこが熱い気がした。

それから、顔も熱い気がした。






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