One More Time

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「会場までどんくらい?」

「バスで20分くらいだと」

「つーかこーゆーのは最初に言ってよカントク…」

「言ってたら合宿中気が散るからよ!
けどみる価値大でしょ。海常対桐皇学園」




海常 対 桐皇学園

私たち誠凛はこの2校の試合を観るためにバスで移動している。



私はバスから見える景色を見ながらため息をついた。



涼太対大輝、か。
どっちが勝つかな。
そういえば涼太、中学時代は一回も大輝に勝っててなかったっけ。
何回負けてももう一回!って大輝に1on1を挑む姿はなんだか微笑ましかった。
大輝もなんだかんだで、涼太のその姿勢が面白かったんだろうな、って今では思う。





「…なぁ、カントク」

「なに」

「翼、インターハイ見に行くっつってから元気なくね?」

「明らかに元気ないよな」

「励ましに行くか、よくわからんが」

「ちょっと、複雑な乙女心に水を差すようなこと、言わないでよね」

「ん?どういう意味?」

「さっぱりわかんねぇな」

「この試合には、思うところがあるのよ、きっと」




リコ先輩と日向先輩と伊月先輩が私の心配をしているのが微かに聞こえてしまった。
心配かけさせたいわけじゃないのに。
感情が表にでてしまうのはどうにも厄介だ。
この性格直したいなあ。



私は再びため息をついた。



昔は味方同士。
けど今は、敵として戦う。

今更なんだけど改めてそう考えると、少し悲しくなった。
きっと大輝と涼太は特に一緒にバスケをした時間が長いからそう思うのかも。
思わずため息が出てしまった。





「翼さん、着きましたよ」

『…え、…う、うん』




いきなりテツヤに声をかけられ焦って変な声が出てしまった。

はぁ、いけないいけない。
しっかりしなきゃ。

私はテツヤのあとに続いてバスを降りた。







会場に向かって歩いていると、テツヤがポツリとつぶやいた。





「…気が進みませんか」

『え?』

「黄瀬君と青峰君の試合を見るのは」

『…いや、そういうわけじゃないんだけど、さ』




やっぱりテツヤには勘付かれる。
というか私が分かりやすいだけなのか。




「翼さんはよくあの二人と一緒にいましたからね」

『うーん、まあね。涼太と大輝とはよく一緒にいたなぁ』




キセキの世代のみんなとは仲良くしてたけど、特によく一緒にいたのは涼太と大輝だった。
バスケの3バカって言われてたくらい、3人でいるときは交代で1on1、よくしてたっけ。




"青峰っち!翼っち!今日もやるっしょ?1on1!"

"うん!もちろん!"

"黄瀬、今日こそオレに勝ってみろよな"

"臨むところッスよ!"

"またやるのか、あの3バカは"

"みたいですね"

"おい、緑間、今バカっつったろ!"

"バスケバカにバカと言ってなにが悪いのだよ"

"あーはいはい!大輝つっかからない!"

"そうッスよ!早くやろーッス!"

"わーったよ!んじゃ、まずオレと翼な!"





大輝と二人の時はお昼に1on1やってたけど、涼太が来て部活のあともやるようになったっけ。
懐かしいなぁ…ほんとに。

















ワァァァァァア


インターハイの会場に足を踏み入れると歓声と応援の声に圧倒された。
高校の全国大会はやっぱり違うな。





「カントク お目当ての試合は?」

「この試合のアト…ちょうどもうすぐよ」




観客席について一息つく。

あと、少し…
もう少しで、涼太と大輝の試合が始まる…




「……おい、紺野、なに浮かない顔してんだよ」




私の隣に座っている大我は、不機嫌そうにそう言った。




『え、そんな顔してた?』

「おう」




私はそんなにこの試合が見たくないのか…。

いや、観たいには観たいだけど複雑というかなんというか。
きっとどっちが負けても私は泣きそうになってしまう。

あぁ、もう…




「うじうじしてんじゃねぇよ」

『なっ、うじうじなんて…』

「してるよ。ったく、キセキのやつらもごちゃごちゃ考えすぎだろって思うけどよ、
紺野が一番考えすぎなんじゃねぇの?」

『うっ…』




大我に痛いとこをつかれた気がした。

私なんてキセキのみんなと仲良かっただけだし、みんなで試合にでたとかそういうのはないのに。
部外者のようなものなのに。

なんで、私はこんなにも余計なことを考えては感情に出してしまうんだろう。





「…元気出せよ、こっちの気が狂うだろ」

『え、なんで大我が?』

「うるせえな、オレはお前のそういう顔、見たくねぇんだよ。
…笑った顔のがいい」




………。

えっと、大我、今とても恥ずかしいことを言ってくれたような…。




「火神君、よくそんなこと、さらっと言えますよね」

「黒子、聞いてたのかよ!」

「翼さんの隣に座ってるんですからそりゃ聞こえますよ。
それともあれですか、わざとボクにも聞こえるように言って牽制してるんですか?宣戦布告ですか?」

「え、い、意味わかんねぇんだけど…」




…よくわからないけど、テツヤが怒ってる?
そしてよくわからないことで怒られてる大我が押し負けている。




「翼さん、思うところがあるのはボクも同じです。見守りましょう」

『…うん。そうだね。私がくよくよしててもしょうがないね!
大我に諭されたっていうのがなんだか腑に落ちないけど』

「あぁ!?喧嘩売ってんのかお前は!」



テツヤと大我に励まされちゃったなぁ。
マネージャーなのに選手に心配かけるなんて、まだまだ精進しなくちゃ。





ワアァァアアッ





歓声が聞こえたと同時に桐皇、海常両選手がコートに入場した。
大輝と涼太がなにか話しているのが見えた。
俺が勝つッスよ、とかそんなこと話してるのかな。
なんて思いながら二人のことを見てると、目が合った。
二人と。


…?


あれ、私の方見たよね?
目が合った気がしたけど気のせい?

そう考えていると二人に笑われた。



え、ちょっと、今バカにされた?
やっぱり気のせいじゃなかったみたい。



「…あいつらこっち見て笑ってたぞ」

「たぶん翼さんを見てたんですよ」

『ばっちりバカにされた気分だよまったく』

「(ちょっと違うと思いますけどね)」







「それでは準々決勝第二試合 海常高校対桐皇学園高校の試合を始めます」







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