One More Time

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合宿三日目。

秀徳との練習試合は3試合やって3敗。
結果だけ見れば弱くなったと見れるかもしれないけど、強くなってると思う。
本人たちは弱くなったんじゃないかと思っているようだけどね。



そして合宿最後の夜。

私は夕食の準備をし終わり、夕食の時間まで外で明日の荷物の整理をしていた。
これは明日リコ先輩のお父さんが持って行ってくれて…こっちは…。



ドンッ



『ひっ!……え?!なに?!』



突然の大きな音。
なにかが倒れた音かな。
駐車場のほう…いってみよう。




音のするほうへ向かうと、倒れているゴールと大我が見えた。
そしてその横に高尾くんとテツヤの姿が。
なにやら隠れているようにみえる。
高尾くんは私に気付くと、しーっ、と静かにするように指示しながら手招きした。
その通りに静かに近づく。



『こんなところで二人でなにしてるの?というか大我、どうしたの?』

「いや〜火神がジャンプしてゴール倒しちゃったんだよ」

『え!…それでこれね。で、なんで隠れてるの?』

「いいから見てなって」



高尾くんの指差したほうに目を向けると倒れている大我とたまたま通りかかった真太郎が睨み合っていた。



「なんか面白くなりそうじゃね?」

『なるほど』

「ボクは巻き込まれただけです」

『高尾くんに巻き込まれたのね』

「まぁいいじゃん?な!」



にやにやしながら高尾くんがそう言った。

視線を再び大我と真太郎に戻すと、案の定言い合いになっていた。
しかもくだらないことで。
喧嘩するほど…とかいうやつかな。



「まさか空中戦なら勝てるなどと思ってないだろうな?」



真太郎が大我にそう言った。
どうやら図星らしい。
確かに大我の跳躍力はずば抜けている。
でも真太郎の言うとおり、ただ高く飛んでも武器にはならない。



「来い。その安直な結論を正してやる」



真太郎のこの言葉をきっかけに二人は1on1を始めた。



「真ちゃんの言った通り、火神のあのジャンプ力にはまだ先があるのかよ…」

『それを自分で気づければ良かったんだろうけどね。真太郎ってば本当優しいよ』

「真ちゃんが優しいとかなんか逆に怖ぇわ」

『え?真太郎はいつも優しいじゃん。ね、テツヤ?』

「分かりづらい優しさでしたけどね」

「オレには全然優しくねぇよ〜。ま、翼ちゃんが優しくしてくれるならそれで充分だけどな?」



そう言って高尾くんは私の肩に手を回してきた。



「高尾君、翼さんにあまりべたべたしないでください」



テツヤは私の肩に会った高尾くんの腕を少し強引に払いのけた。



「へぇ。黒子って案外…」

「…なんですか」

『えっと、とりあえず二人のゲームが終わったみたいよ?』



なぜか険悪になりそうな二人の肩を軽く叩いて静止した。



「やめだ。このまま何本やっても同じなのだよ」

「なっテメェ…」

「いい加減気づけバカめ。どれだけ高く跳ぼうが止めることなどたやすい。
なぜなら、必ずダンクがくるとわかっているのだから」



真太郎はそう大我に言ってこちらに近づいてきた。



「行くぞ高尾」

「あり?バレてた?」



高尾くんはじゃあね翼ちゃん、と手を振るとそのまま真太郎について行った。

そのとき真太郎とテツヤの目が合った。



「…ウィンターカップでガッカリさせるなよ」

「…はい」



そしてちら、と私のほうを見た真太郎と目が合った。



「……」

『…?』



目を合わせたまま何も言わない真太郎。
不思議に思って首をかしげると、真太郎が驚いた顔をしたあとごほん、と咳払いをした。



「…ま、またな」

『あ、うん。また会おうね!』



そう言って手を振ると真太郎はさっさと歩いて行った。
高尾くんもそのあとを追って歩いて行った。



「緑間君も要注意ですね…」

『え?なにが?』

「いえ、こっちの話です」

『?』



ふと大我のほうに目を移すと、大我は少し悔しそうに見えた。
と同時に何かを決心していた。
そのまま大我は海辺のほうへ走って行ってしまった。



「翼さん、ちょっと行ってきます」

『うん。テツヤも何か良いヒントがあるといいね』

「はい。火神君と話してみます」



そう言ってテツヤは大我を追って走って行った。



一人になった私はぐーっと伸びをして立ち上がった。



『みんな、青春だねぇ』



私はテツヤと大我が走っていった海辺のほうを向いてそうつぶやいた。


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