One More Time

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テツヤと大我のわだかまりが解け、敗戦の傷も少しずつ癒えてきた。
熱い夏は終わりかと思いきや、そうではない。



夏休み。



そう、学生が待ちに待った夏休みが始まる。
きっとバスケ三昧の夏なんだろうなぁ。

案の定、今年の合宿は山と海の両方。
両方なんてさすがリコ先輩だ。











そして今日は調理室に集合となった。

日向先輩曰く、合宿ではリコ先輩がご飯を作るらしい。
それが殺人級だと言う。
一体どんな料理なのか…逆に気になる。


でも私はリコ先輩の手料理を食べれそうにない。
この日はもともとリコ先輩から備品の買い出しを頼まれていたから。
それを終えてから合流する予定だ。
先輩たちに買い出しは後でもいいし着いていく、って言ってくれたけど、選手にそんなことはさせられないし。
これくらいは一人でやらなきゃ、というわけでスポーツショップで買い出し真っ最中なのである。





『えっと…テーピングと粉末ドリンク…』

「あっれ〜?翼チャンじゃん!」




名前を呼ばれて振り向くと、そこには秀徳の高尾君がいた。




「奇遇だね〜」

『高尾君、久しぶりだね!』

「お、名前覚えててくれたんだ」

『当たり前だよー!…って今日は真太郎一緒じゃないの?』

「真ちゃんはほかに寄るとこあるっつってどっか行ったから後からくんじゃね?」

『そうなんだ』

「気になる感じ?やっぱ真ちゃんのこと好きなの?」

『え?そりゃ好きだけど』




そう言うと高尾君は固まった。
そしてぶっ、と噴き出したと思ったら爆笑していた。





「くくく…やばい…翼チャンおもしろ…」

『ど、どうかした?』

「これは手強いよ真ちゃん…」

『え?なに、どういうこと?』

「いやいやなんでもない、こっちの話」





高尾君はよくわからないところがツボなんだなぁ。





『というか高尾君、今日は練習お休みなの?』

「今日はオフ。っつってもさっき真ちゃんとバスケしてきたんだけどね」

『バスケ好きなんだね』

「まぁ、次は負けたくねーからな」





そう言って目をぎらつかせる高尾君。
本気なのが伝わってくる。
誠凛も負けてられないねぇ。





『さて、そろそろ誠凛に戻らなきゃ』

「誠凛戻るの?」

『うん、そうだよ』

「ついでだから乗ってきなよ」

『乗ってくって…あのリアカー…?』





お店の外を見ると、高尾君が引いてきたであろうリアカーがあった。
あれに真太郎が乗ってるのか。





『いやいや悪いよ…』





というか少し恥ずかしいんですけど。




「あれ、もしかして恥ずかしいとか思ってる?大丈夫!慣れちゃえばヘーキヘーキ!」

『そ、そうかな?』

「そうそう!真ちゃんじゃなくてたまには可愛い女の子乗せたいしね」





そう言うと高尾君はニッ、と笑いながら私の顔を覗きこんできた。
前から思ってたけどこの人、人との距離近いなぁ。
私も人見知りしないほうだから言えないけど。





『んー、じゃあお願いしようかな!』

「よっし!任せとけ!」

『買い物済ませてくるね!』





買い物を済ませ、店の外に出るとすでにスタンバイしている高尾君がいた。




「後ろ乗りな!」

『ありがと!…って真太郎、戻ってきたよ?』




後ろから真太郎が歩いてきているのが見えた。
手には…大きなペンギンのぬいぐるみ。
たぶんラッキーアイテムなんだろうな。




「ん?なぜ翼がいるのだよ」

「真ちゃん来るの早いよ〜せっかく翼チャンとデートするとこだったのに」

「なっ、デートだと!?」

『違うよ?そこのお店でたまたま会って誠凛まで送ってくれるっていうからお言葉に甘えようかと思って』

「翼チャン、ネタバレ早すぎ〜」

『あ、ごめん』

「…そういうことか」




真太郎はそう言うと私のとなりに座った。




「ちょ、真ちゃん?もしかして乗るの?」

「当たり前だ」

「いやいやいや!めっちゃ重いよこれ!」

「うるさい。さっさと行け」

「あーもーわーったよ!!」

『高尾君、ごめんね』

「翼チャンは全然悪くないから気にすんな!じゃ、行くぜ!」




そう言って高尾君は重たいペダルをこぎだした。





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