One More Time

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決勝リーグが終わって初めての練習。


みんないつも通りに見えるけれど、全然入ってない。
あの敗戦が響いてるみたいだ。
そりゃ当たり前か…。

特に、テツヤ。
なんか、変だ。

今日クラスでも感じたけど…というか大我と全然話してなくて私も二人に声かけづらかったけど。
それでも大我とテツヤの様子を観察してて思った。
重症なのはテツヤだ。




次に目指すのはウインターカップ。
リコ先輩はみんなを集めてそう言った。




「これで冬もダメだったら全裸やるぞマジであの女は」




日向先輩がそう言うと部員たちは怯え、リコ先輩は満面の笑みを浮かべた。
はて、全裸とは…?




「あぁ、翼は知らなかったな。入る前だし」

『はい。伊月先輩、なんですか全裸って』

「優勝しないと全裸で屋上から好きな子に告白っていう罰ゲームが待ってるんだよ」

『え…まじですか』

「まじだ」

『それはマネージャーもでしょうか』

「いや女の子全裸はまずいだろ」

『じゃあ服着てていいんですね…よかったぁ。
っていうかその前に勝てばいい話ですもんね!』

「そんなキラキラした目でそう簡単にいかないこと軽く言うな」

「なんか翼もカントクに似てきたな少し」




日向先輩が憐みの目を私に向けてそう言った。
リコ先輩に似てたら結構嬉しいんですが、私。
憧れの女性と言っても過言ではないし。




「そういえば、もうすぐ帰ってくるわ。鉄平が」




鉄平…さん?




『鉄平さんって誰ですか?』

「ウチは7番いないだろ。そいつの番号なんだ、誠凛のエース」

「…あ、やばいもう体育館閉める時間だわ!その話はまた今度ね!」

「おーし、じゃあ上がんぞ」




日向先輩の掛け声で今日の練習は終了した。

















『鉄平さんってどんな人なんだろうね〜』




私はコンビニで買ったアイスキャンディーを頬張った。
一緒に帰っているテツヤはマジバで買ったバニラシェイクをずずっと飲んでいた。




「さぁ、エースと言われている人ですから強い人なんじゃないですか?」

『そりゃ分かるけど…でも私心当たりあるんだよね』

「鉄平さんですか?」

『うん。鉄平っていう下の名前しか分からないけど、"鉄心"って呼ばれてた人かなぁって』

「ボクは聞いたことないですね」

『……テツヤ、さ』

「はい」

『……やっぱなんでもないや』




大我と話さないの?

そう聞こうとしてやめた。
今はきっと話そうとしない。
少なくとも今のテツヤは自分のバスケに迷いがあるように見える。
その状態で大我と話しても、きっと揉めちゃうんだろうなって思った。




「あの、翼さん」

『ん?なに?』

「誠凛に入って良かったですか?」

『もちろん!』

「そうですか」

『突然どうしたの?』




テツヤは黙った。
なんでそんなことを聞くのだろう。
質問の意図が分からず、思わず首をかしげた。




「…これでよかったのかと、思ったんです」

『どいうこと?』

「自分のバスケの証明のために翼さんや火神君、みんなを巻き込んでしまっている気がしてならないんです。
もちろん日本一になりたいっていう目標は本物です。けど…」

『テツヤってさ、すごいよ』

「え?」

『テツヤは私に、テツヤならやってくれるって思わせてくれた。
人にそんなこと思わせる人なんてなかなかいないんだよ?
それは私だけじゃない、大我だってテツヤとだったらキセキを倒せるって思ってるしみんなだってそうだと思う。
それくらい、テツヤには力があるんだから。
だから巻き込んでしまった、なんてそんな言い方しないで。
まだ私にテツヤを信じさせておいて』




テツヤは少し驚いた表情をしてからふ、と笑った。




「ありがとうございます、翼さん」

『えー?それは何に対してのお礼?』

「今までの全部です。そしてボクについてきてくれたことです」

『…うん!』

「まだ考えがまとまらなくて、正直迷いもあります」

『今はそれでいいと思う。今はね!』

「…翼さんは本当に…」

『え?』

「いえ、ただ翼さんのこと好きだなって思って」

『ふふ、私もテツヤのこと大好きだよ!』

「…それは嬉しいです(そういう意味じゃないんですけどね)」




テツヤは笑いながらもどこか悲しそうだった。
んー、私変なこと言ったかな?



とにかく。
これから修復しないといけないのは、大我とのこと。
それから、プレイスタイルのこと。
問題は山積みだと思うけど、その問題が解決できるような手助けができればいいなと思ってる。
マネージャーとして、友達として。





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