One More Time
□04
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誠凛 対 秀徳
ついに試合が始まった。
「始まったッスね」
『うん』
キセキの世代との公式戦。
きっと中学の時とは違う。
涼太がそうだったように真太郎も成長してるはず。
試合開始から2分経過。
お互い点が取れないまま均衡状態に入った。
そしてその均衡は、真太郎の3Pシュートによって破られる。
しかし、テツヤの長距離パスから大我のダンクシュートで点を取った。
「緑間っちが封じられてる?」
「あぁ。あの透明少年の回転式長距離パスでな」
真太郎のシュートの滞空時間で火神が走って戻れる。
そしてテツヤのパス。
これがあるから真太郎はシュートが打てない。
やっぱりテツヤはすごい。
「にしてもそのパスをを見せつけるタイミングと判断力、一発で成功させる度胸…再認識したぜ。
アイツ、ああ見えてお前と帝光中にいただけはある。百戦錬磨だ」
そのすごさを笠松さんは感じていてくれていた。
なんだか私が誇らしくなってしまった。
その後、マークの交代で秀徳のPGの高尾君がテツヤについた。
なにか策があるのかな。
するとすぐにその答えがわかった。
テツヤのパスが通らなくなったのだ。
どうやら、高尾君にはテツヤのミスディレクションが効かないみたい。
思わぬところに天敵がいた。
テツヤが効かない、というだけで充分ダメージだったが次の真太郎のシュートでさらにダメージを受けることになる。
『…え?コートの端でシュートモーション…?』
真太郎は、コートの端からゴールにシュートを決めた。
「…まじッスか」
「化け物だな…」
『成長してるとは思ってたけど…ここまでなんて』
第1Q終了。
誠凛はインターバル前にとても大きなダメージを受けた。
そこからの第2Qはなんとか秀徳にくらいつくが、真太郎のシュートと高尾君のアシストで点差は離れていく一方だった。
第2Q終了間際の真太郎のシュート。
誠凛の心は折れかけていた。
と、思ったが、なんだか大我の様子が変だ。
第2Q終了。
「結局ずるずる離されて前半終了かよー」
「てか終わりだろ。もう帰ろうぜ」
後ろからそんな声が聞こえた。
すると涼太はむっ、とした顔をした。
『涼太。そんな睨まないの』
「だってさー」
『まだこれからどうなるか分からないんだからさ』
「それはそーッスけど…。っも〜〜〜根性見せろよ誠凛〜!!」
「見せてるよバカ」
『あーなんか!私が試合に出たい!!!………なーんちゃって』
言った後にまずいと思った。
涼太に気を遣わせてしまう…。
「翼っち…」
『そ、そんなにしんみりしないでくれるかな?』
「ごめんッス」
「そういや、紺野は帝光でバスケやってたんだってな」
『はい。まぁ怪我でできなくなっちゃったんですけどねぇ』
「軽く黄瀬に聞いたよ。でも帝光中の女子バスケ部も3連覇してたよな?」
『笠松さんよく知ってますね!』
「月バスで取り上げられてたの覚えてたんだよ」
「翼っちが入ってからッスよ!女子が強くなったのは!」
『それは大げさだよ』
「でも実際翼っちが入るまでは県ベスト8止まりだったじゃないッスか!怪我がなければ今頃…」
『涼太、それはもういいって!そんなこと言っても怪我が治るわけじゃないし、プレーしなくても充分だよ!』
「でも一生治らないわけじゃないんだろ?」
『はい!高校の間はたぶん無理ですけどね』
「じゃあまたできるじゃねぇか。諦めんなよ」
そう言って笠松さんは私の頭をぽん、と叩いた。
笠松さんはとてもいい人だなぁ。
お兄ちゃんがいたらこんな感じかな。
「笠松先輩…女子嫌いっていうのは嘘だったんスね」
「あ、いや、これはついな…」
「それって、翼っちは特別ってことッスか!?そんなのオレ認めないッスよ!ねぇ翼っちは…」
『あ、試合始まるみたい』
「スルー!?」
第3Q開始。
大我の様子が変。
気のせいかと思ったがそれが確信に変わった。
試合中にどんどん高く跳ぶ大我。
ついに、真太郎のシュートを止めた。
でも…なんか…
『似てる…』
「なんか言ったか?」
『あ、いやなんでもないです…』
「青峰っち、スか?」
涼太はこそ、と私に耳打ちしてきた。
私は、涼太の言葉にこく、とうなずいた。
今の大我がアイツと被る。
前から少し思ってた。
青峰…大輝に似てるって。
そのうち、大我は高いジャンプの連発でついに跳べなくなった。
そして誠凛はあまり差を詰めることができず、第3Qを終えた。
インターバル中、心配になって誠凛のベンチに目を向けると、大我の雰囲気が違うことに気付いた。
まさしく、大輝…いや、個人プレーが主になったキセキの世代に似ていた。
すると、テツヤが大我を殴っているところが目に入った。
『テツヤ…?』
「黒子っちがどうかしたん…って、なんかもめてるッスね」
「火神も殴り返したな」
「うわっ、あれは酷いッスね」
『でも、大丈夫みたいだね』
また、大我の雰囲気が変わった。良い方向に。
きっとテツヤが変えてくれたんだ。
テツヤがいれば、大我は大丈夫。
私は安堵のため息を漏らした。
第4Q開始。
大我のジャンプが連発できなくなった今、カギになるのはテツヤ。
そんなテツヤを今までマークしていた高尾君だったが、ついにミスディレクションにひっかかった。
そして加速するパス。
テツヤは高尾君の目から逃れることができた。
誠凛は秀徳に1ゴール差まで追いついた。
ラスト10秒を切った。
日向先輩が3Pシュートを決めて逆転。
『やった…!』
「いや、まだだ」
再びボールは緑間の手に渡った。
残り3秒。
大我は跳んだ。
しかし、それを予想していた真太郎も。
そしてそれさえも予想していたいテツヤ。
駆け引きの末、誠凛の勝ちが決まった。
ビーッ
「試合終了!!!」
「勝った…ッスね」
『うん…』
「あれ?嬉しくないんスか?」
『そんなわけないじゃん!…ちょっとでも真太郎の中で変化があればいいな、って思ってさ』
「変化…」
『涼太は変わったと思うよ?』
「そうッスか?」
『うん!」
ピロリン
あ、メール…真太郎だ。
外にいる
とだけ連絡が来ていた。
『…じゃ、そろそろ行かないと』
「みんなのとこ行くんスか?」
『あー…とりあえず、真太郎と約束してたから先にそっち行ってからかな』
「緑間っちと…?」
『試合が終わったら話そ、って言ったからさ』
「そ、ッスか。変なことされないように気を付けるんスよ!」
『ふふ、なにそれ!それじゃ、涼太、またね。笠松さんもまた試合で!』
「おう」
私は真太郎の待つ場所へと向かった。
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