One More Time

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誠凛 対 秀徳




ついに試合が始まった。







「始まったッスね」

『うん』







キセキの世代との公式戦。

きっと中学の時とは違う。
涼太がそうだったように真太郎も成長してるはず。



試合開始から2分経過。
お互い点が取れないまま均衡状態に入った。

そしてその均衡は、真太郎の3Pシュートによって破られる。
しかし、テツヤの長距離パスから大我のダンクシュートで点を取った。






「緑間っちが封じられてる?」

「あぁ。あの透明少年の回転式長距離パスでな」






真太郎のシュートの滞空時間で火神が走って戻れる。
そしてテツヤのパス。
これがあるから真太郎はシュートが打てない。

やっぱりテツヤはすごい。






「にしてもそのパスをを見せつけるタイミングと判断力、一発で成功させる度胸…再認識したぜ。
アイツ、ああ見えてお前と帝光中にいただけはある。百戦錬磨だ」






そのすごさを笠松さんは感じていてくれていた。

なんだか私が誇らしくなってしまった。






その後、マークの交代で秀徳のPGの高尾君がテツヤについた。

なにか策があるのかな。



するとすぐにその答えがわかった。
テツヤのパスが通らなくなったのだ。
どうやら、高尾君にはテツヤのミスディレクションが効かないみたい。
思わぬところに天敵がいた。



テツヤが効かない、というだけで充分ダメージだったが次の真太郎のシュートでさらにダメージを受けることになる。






『…え?コートの端でシュートモーション…?』






真太郎は、コートの端からゴールにシュートを決めた。






「…まじッスか」

「化け物だな…」

『成長してるとは思ってたけど…ここまでなんて』






第1Q終了。

誠凛はインターバル前にとても大きなダメージを受けた。






そこからの第2Qはなんとか秀徳にくらいつくが、真太郎のシュートと高尾君のアシストで点差は離れていく一方だった。
第2Q終了間際の真太郎のシュート。
誠凛の心は折れかけていた。

と、思ったが、なんだか大我の様子が変だ。




第2Q終了。






「結局ずるずる離されて前半終了かよー」

「てか終わりだろ。もう帰ろうぜ」






後ろからそんな声が聞こえた。
すると涼太はむっ、とした顔をした。






『涼太。そんな睨まないの』

「だってさー」

『まだこれからどうなるか分からないんだからさ』

「それはそーッスけど…。っも〜〜〜根性見せろよ誠凛〜!!」

「見せてるよバカ」

『あーなんか!私が試合に出たい!!!………なーんちゃって』






言った後にまずいと思った。
涼太に気を遣わせてしまう…。







「翼っち…」

『そ、そんなにしんみりしないでくれるかな?』

「ごめんッス」

「そういや、紺野は帝光でバスケやってたんだってな」

『はい。まぁ怪我でできなくなっちゃったんですけどねぇ』

「軽く黄瀬に聞いたよ。でも帝光中の女子バスケ部も3連覇してたよな?」

『笠松さんよく知ってますね!』

「月バスで取り上げられてたの覚えてたんだよ」

「翼っちが入ってからッスよ!女子が強くなったのは!」

『それは大げさだよ』

「でも実際翼っちが入るまでは県ベスト8止まりだったじゃないッスか!怪我がなければ今頃…」

『涼太、それはもういいって!そんなこと言っても怪我が治るわけじゃないし、プレーしなくても充分だよ!』

「でも一生治らないわけじゃないんだろ?」

『はい!高校の間はたぶん無理ですけどね』

「じゃあまたできるじゃねぇか。諦めんなよ」






そう言って笠松さんは私の頭をぽん、と叩いた。
笠松さんはとてもいい人だなぁ。
お兄ちゃんがいたらこんな感じかな。






「笠松先輩…女子嫌いっていうのは嘘だったんスね」

「あ、いや、これはついな…」

「それって、翼っちは特別ってことッスか!?そんなのオレ認めないッスよ!ねぇ翼っちは…」

『あ、試合始まるみたい』

「スルー!?」






第3Q開始。



大我の様子が変。
気のせいかと思ったがそれが確信に変わった。

試合中にどんどん高く跳ぶ大我。
ついに、真太郎のシュートを止めた。

でも…なんか…






『似てる…』

「なんか言ったか?」

『あ、いやなんでもないです…』

「青峰っち、スか?」






涼太はこそ、と私に耳打ちしてきた。

私は、涼太の言葉にこく、とうなずいた。



今の大我がアイツと被る。
前から少し思ってた。

青峰…大輝に似てるって。


そのうち、大我は高いジャンプの連発でついに跳べなくなった。






そして誠凛はあまり差を詰めることができず、第3Qを終えた。



インターバル中、心配になって誠凛のベンチに目を向けると、大我の雰囲気が違うことに気付いた。
まさしく、大輝…いや、個人プレーが主になったキセキの世代に似ていた。



すると、テツヤが大我を殴っているところが目に入った。







『テツヤ…?』

「黒子っちがどうかしたん…って、なんかもめてるッスね」

「火神も殴り返したな」

「うわっ、あれは酷いッスね」

『でも、大丈夫みたいだね』







また、大我の雰囲気が変わった。良い方向に。
きっとテツヤが変えてくれたんだ。

テツヤがいれば、大我は大丈夫。

私は安堵のため息を漏らした。








第4Q開始。



大我のジャンプが連発できなくなった今、カギになるのはテツヤ。
そんなテツヤを今までマークしていた高尾君だったが、ついにミスディレクションにひっかかった。
そして加速するパス。
テツヤは高尾君の目から逃れることができた。

誠凛は秀徳に1ゴール差まで追いついた。




ラスト10秒を切った。

日向先輩が3Pシュートを決めて逆転。






『やった…!』

「いや、まだだ」





再びボールは緑間の手に渡った。

残り3秒。




大我は跳んだ。
しかし、それを予想していた真太郎も。
そしてそれさえも予想していたいテツヤ。


駆け引きの末、誠凛の勝ちが決まった。





ビーッ





「試合終了!!!」







「勝った…ッスね」

『うん…』

「あれ?嬉しくないんスか?」

『そんなわけないじゃん!…ちょっとでも真太郎の中で変化があればいいな、って思ってさ』

「変化…」

『涼太は変わったと思うよ?』

「そうッスか?」

『うん!」






ピロリン


あ、メール…真太郎だ。



外にいる



とだけ連絡が来ていた。







『…じゃ、そろそろ行かないと』

「みんなのとこ行くんスか?」

『あー…とりあえず、真太郎と約束してたから先にそっち行ってからかな』

「緑間っちと…?」

『試合が終わったら話そ、って言ったからさ』

「そ、ッスか。変なことされないように気を付けるんスよ!」

『ふふ、なにそれ!それじゃ、涼太、またね。笠松さんもまた試合で!』

「おう」






私は真太郎の待つ場所へと向かった。





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