One More Time
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『また勝ったんだってね!』
眠そうな大我とテツヤに話しかけた。
今はお昼休み。
私はいつもテツヤの席にイスを持っていき、ご飯を食べている。
実は、大我にちょっかいかけるのが楽しかったりするのだ。
「あぁ、まぁな」
『なに?嬉しくないの?』
「嬉しいけどよ、眠くて仕方ねぇんだよ」
「火神君は寝てばかりですね」
「てめぇも寝てんだろ!!」
『テツヤは先生に気付かれないもんね!』
「こういうときだけお前の影の薄さが羨ましいぜ」
ゴールデンウィークが明け、予選が始まりいつも以上に練習がハードなのか、授業中の二人は居眠りばかりしている。
私もたまに練習に顔出すけれど、確かに大変そうだなぁって思う。
でもそれだけみんな本気なんだって思った。
キセキの世代を倒すという目標がだんだん近づいていくような、そんな気がした。
『で、何回戦突破?』
「5回戦です」
『はー、すごいね。私は一回戦と三回戦見に行ったけど、ずっとあの調子で勝っていったのね』
「いえ、昨日は二試合連続だったのでスムーズには行かなかったです」
『あー、だから大我はいつにも増して食べる量が多いのね』
「ハラ減ってしょうがねぇんだよ」
『テツヤはいつもと変わらないね』
「ちゃんと筋肉痛です」
「ちゃんとってなんだよ」
「あ、そういえば緑間君に会いました」
『そうなの?会場にいたんだね!』
「試合も見たんですけど、相変わらずです」
『ちょっと見たかったなぁ』
ふと、教室の外に目を向けると、段ボールを抱えたリコ先輩を見つけた。
するとリコ先輩もこちらに気付いた。
「あら、翼ちゃん!」
『リコせんぱーい!!』
リコ先輩に駆け寄って五回戦突破のお祝いの言葉を述べると、リコ先輩はありがとう、と笑って返してくれた。
『というか何持ってるんですか?』
「去年と今年の試合のDVDよ。次は王者と二連戦だからね」
『それは分析しなくちゃですね。あ、それテツヤと大我に運ばせましょ!重いでしょう?』
「それもそうね。か弱い女の子に持たせちゃダメよね?」
にこー、とお互い笑い合った。
これ端から見たらだいぶ怖い絵になってると思うよ。
「火神君!黒子君!ちょっと来てっ」
渋々、段ボールを運ぶ二人を見送った。
さて、私はなにしよう。
ご飯も食べ終わったし、少し散歩しようかな。
私は校舎をぶら、とすることにした。
したところでなにも新しい発見はないけれど。
そんな散歩を開始した直後、誰かが私の肩を叩いた。
「よ、なにしてんだ?」
『あ、日向先輩と伊月先輩!』
「一人?火神たちは一緒じゃないのか」
『はい。リコ先輩のお手伝いしてますよ』
「それはご愁傷様だな」
二人はお昼を終えた後のようで教室に帰るところだったという。
たまに一緒にご飯を食べるようだ。
『あ!五回戦突破おめでとうございます!』
「おぉ、サンキュ」
「次はきついけどな」
『秀徳と正邦でしたっけ?』
「あぁ。王者二試合はきついよな」
『でもきっと大丈夫です!私応援に行くので!』
「それは勝たなきゃいけねぇな」
『あ、そういえば去年ってどうだったんですか?』
その瞬間、二人の表情は強張った。
…聞いてはいけなかったかもしれない。
『あ、あの…』
「去年はボロ負けだよ。三大王者にトリプルスコアでね」
「かっこ悪い話だよな」
『そんなことない!!!』
思わず大きな声でそう言ってしまった。
でも、本当にそんなことないと思った。
『そんなこと、ないです。去年の先輩たちの試合は見てないですけど、全力でやった結果だと思います。
きっと、それでバスケが嫌になったり…したと思います。でも今こうやってまだ続けてる。
また去年と同じ舞台に立って戦おうとしてる。それはすごくかっこいいと思います!!』
自分でも何を言ってるか分からなくなったが、言葉がすらすら出てきた。
余計にお世話だって思われてるかもしれないけど、口が止まらなかった。
そして言い終わって、先輩たちの顔を見て焦った。
お二人とも唖然としてらっしゃる。
『す、すみません!偉そうにこんなこと言って!』
「…はは、言うなぁ翼」
「ありがとう。なんかやる気でたよ」
二人はにこ、と笑ってそう言った。
「よし、準決勝、絶対勝つ」
「そうやって言ってくれた翼のためにもな」
『え、あ、はい…』
そう言われて少し恥ずかしくなってしまった。
なに照れてんだ、と日向先輩は私の頭を少し強引に撫でた。
『痛いです、日向先輩』
「うっせ!もうすぐ予鈴なるからさっさと帰れー」
「あ、今日は部活来る?」
『はい、顔出させてもらいます』
「じゃ、またあとでな」
そう言って二人は教室に向かっていった。
ついに、公式戦でキセキの世代と当たるんだ。
王者、秀徳高校。真太郎のいる学校だ。
絶対、勝ってほしいな。
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