One More Time

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"ボクに、着いてきてください"






そう言われて誠凛高校に来た。
去年できたばかりの新設校だということで、校舎も綺麗だし生徒もほかの高校に比べると少ない。
なんで新設校に来たかというと、さっき言った誘われたから。
そんな簡単に進路を決めたのか、と言われれば返す言葉もないけれど。






「翼さん」






私を呼んだのは、同じクラスの黒子テツヤ。

中学の同級生でバスケ部で、私を誠凛高校に誘った張本人。
私もバスケ部だったからそれでなんとなく一緒にいるようになった。

誠凛高校には男子バスケ部があっても、女子バスケ部はない。
私は中学時代、バスケで怪我をしてそれから選手としてはいられなくなった。
だから、女子バスケ部のない誠凛高校で普通の高校生活を送る予定だ。

バスケが大好きだったから、つらいっていうのはあるけれど。
怪我をした当時はショックすぎて学校を休んだり、家に籠ってしまったり。
けれど今は怪我したことは仕方のないことって思うことにしている。
私も大人になったなぁ。うんうん。






「今週末、練習試合があるんです」

『あ、そうなの?』

「はい。相手は海常高校です」

『海常?…あぁ、涼太か!』

「見に来てくれませんか?」

『なるほどー。キセキの世代と初の試合っていうわけね。もちろん行くよ!』

「ありがとうございます」

「なんだ、紺野来んのか?」






テツヤの頭に体重を乗せて登場したのは、同じクラスの火神大我。

彼もバスケ部で、かなり才能がある。
一回練習を見学に行った時はびっくりした。
キセキの世代に匹敵するかもしれない。いや、むしろ上を行ってくれるんじゃないか。
そう感じさせてくれたすごい人だ。
テツヤ繋がりでバスケが好きってことで仲良くしてくれている。
顔は怖いけどとてもいい人だ。






『なに大我、私が来ちゃダメなの?』

「そういうわけじゃねぇけどよ。黄瀬に会うんだぞ?いいのか?」






キセキの世代。
中学バスケを震撼させた5人の天才。
その5人とも、中学時代は仲良くしていた。
あることをきっかけに疎遠になってしまっているけど…。
そのキセキの世代の一人、黄瀬涼太との試合を見に行くっていうことは会うということ。
会うのが気まずいのにいいのか?
大我の言葉の意味はそいうことだった。






『うーん、別に嫌いになったわけじゃないしね。涼太はもしかしたら私のこと嫌いかもしれないけど』

「それはないです。絶対ありえません」

『なんでそんな言い切れるのよー』






私は、はは、と笑った。
テツヤは根拠もないのに言い張ることがあるからたまにすごいと思う。






「黄瀬君は翼さんを嫌ったりしませんよ」

『…うん。ありがとね、テツヤ!』

「とにかくあいつらぶっ倒せばいいんだろ」

『そういうこと!…大我、かっこいいじゃん!』

「うるせぇよ!」






少し照れたのか、大我は顔を逸らした。







「翼さん。約束は、必ず守ります」


『…うん』








「必ず、キセキの世代を倒して日本一になって見せます」










誠凛高校に誘われたとき、テツヤが言った言葉。







"ボクに、着いてきてください"







私が誠凛高校に決めたのは、








"必ずキセキの世代を倒して、日本一になってみせますから"








テツヤの、この言葉を信じてみようと思ったから。












(この真っ直ぐな目を)
(信じてみたかったから)


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