One More Time

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コートに着くと少し先に入っていた桐皇の選手がいた。



いよいよ、だな。



オレがバスケを始めたきっかけでもある人と初めて公式戦で試合をする。
今まで1on1をして勝ったことなんて一度もなかった。
あの時はただただ楽しくて夢中で向かっていた。
そんな記憶。

あぁ、そういえば翼っちともその時期に会ったんだよな。
青峰っちにボールぶつけられて部活に入った次の日とかそのくらいで
昼休みに青峰っちとバスケしてる姿を見たんだ。
女子が青峰っちと互角にバスケしてる!って驚いたっけか。

ふと、客席を見ると誠凛のジャージが目に入った。



てことは翼っちも来てる…ッスよね。
あぁ、黒子っちと火神っちの間に挟まれてるや。
きっと翼っちのことだからこの試合、複雑な心境なんだろうな。
もともと勝つ気でいたッスけど、翼っちが見てるならなおさら勝ちたい。



そんな気持ちをぶつけるべく、青峰っちのもとへ近寄った。




「負けねッスよ、青峰っち」

「あん?ずいぶん威勢いいじゃねェか、黄瀬」



このドヤ顔がかっこよくてなんかむかつくッス。



「けど残念だがそりゃムリだ。
そもそも今まで一度でもオレに勝ったことがあったかよ?」

「今日勝つッス。なんか負けたくなくなっちゃったんスよ、ムショーに」



そうかよ、とだるそうに言う青峰っち。



「あぁ、そういえば翼っちが見に来てるの気づいてるッスか?」

「あ?まじかよ」

「あそこッス」



オレが翼っちのほうへ視線をやると青峰っちも視線をそこに移す。
オレたちと目が合った翼っちは驚いた顔をしていた。



「なんだあの間抜け面」

「女の子に失礼ッスよ!目が合って驚いた顔ッスねぇ。かーわいー」



二人して、ふっ、と笑ってしまった。
それを見て翼っちは何やらふくれっ面をしていたけど、それさえも可愛い。
青峰っちとの間に一瞬の間が開いたのち、青峰っちが切り出した。




「……黄瀬、おまえ…」

「オレ、本気ッスから。翼っちのこと」



青峰っちの言葉を遮ってそう言った。
本気か、と聞かれる前に言ってやろうと思って先に言ってやった。



「誰にも渡すつもりはないッス。青峰っちにも」

「言うようになったじゃねェか」

「ま、そういうことなんで。青峰っちも本気なら油断しないほうがいいッスよ?
敵は思ったよりたくさんいるみたいなんで」



じゃ、と軽く手を挙げて海常チームのアップに参加した。





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