え、女子ってバレないんですが?
□2日目
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轟「よーし、1年並べ。」
轟先生に言われ、1年全員が並ぶ。
轟「本日の体力測定はマラソンです!コースは学校の敷地1周です!まずは準備運動!」
走るために準備運動をする。その間ヒソヒソと話し声が聞こえた。
八軒「敷地1周?」
相川「あれ?意外とらくちん?」
轟「えー因みに、わが校の実習農地・実習農林含めた敷地面積は高校では全国一でありまして──1周20kmあります。」
え、小さ。
周りを見ると皆絶望した顔をしていた。
『え、楽じゃない?』
八軒「は!?」
吉野「え、水侍さん大丈夫?km分かってる?」
え、失礼極まりないんだが。
『わかってて言ってる。僕歩き無しで走っていけるよ。』
という事で準備運動終わり次第、僕は水休憩無しで走って行った。隣には駒場も走っていた。
駒場「お前、結構軽々走っていくんだな。」
『まあ、向こうの敷地面積の方がデカかったからね。ここは本当に楽。』
駒場「そんなに広かったのか。」
『うん、ここの倍じゃない?』
駒場「へぇ…向こうってそんな広いんだな。…水侍、水休憩は?」
『要らない。んじゃ、お先。』
駒場が水休憩している間に僕はタッタカ走っていった。1度止まると体が言うこと聞かなくなる場合があるので、止まらないことにしたのが理由である。
休むのは走り終わってからの方がいいのだ。
そのままタッタカ走っていき、1番に走り終わった。ふぅ、と一息着いていると、他の人がゾロゾロと帰ってきた。
『遅かったねぇ…駒場』
駒場「なんでお前…疲れてねぇんだ…?」
少し息が上がってるな。こんなのでへばるなんてだらしがない。
『運動量の違いじゃないか?だから言ったじゃん。楽だって。』
教室に戻った後、クラスメイトから「化け物」と呼ばれるようになった。
失礼極まりない者しか居ねぇのかここは。
───
──
─
桜木「これからこのクラス41人を8班に分ける。朝夕の家畜舎実習等をこの班でやってもらう事になる。
くじ引きで一つだけ6人になるが、5人1組作るからな。3年間仲良くしろよー。」
A班は駒場と相川、八軒、稲田多摩子、常磐、そして僕の6人だった。
今週は鶏舎棟だった。
ニワトリ「おう、全員初日は遅刻無しだな。よしよし。」
鶏舎棟に入ると、沢山のニワトリが居た。
八軒「って、うおー!すげーー!!まるで、卵工場だ!!」
と、八軒が喜んでいた。
僕と駒場と多摩子と相川は卵を綺麗にする係だった。
何か常磐と八軒が話している。
『…美味しそう…』
駒場「何だ?水侍、卵好きなのか?」
『生産者さんの気持ちがこもってて美味しいじゃん。それに、ニワトリが頑張って産んでくれた卵だし。』
[コケーッ]
ガシャーンと音がして僕の膝の上にニワトリが居た。なんか、デジャブ。
撫でてやると大人しく膝の上に座っていたのでそのままにしておいてやることにした。
多摩子「あら、ニワトリが脱走して水侍の膝の上に座るなんて…珍しいこともあるのね。」
ニワトリ「…ニワトリが大人しく膝の上に座るってことあるんだな」
『この子大人しいんで磨いてる間ここ乗せといていいです?どうせ、また脱走する未来が見えるので』
ニワトリ「んー…まあ、許可しよう。」
『やったね。』
[コケーッ!]
相川「…ニワトリがこんな懐っこい事あるんですね…」
ニワトリ「数十年教師としてやってきたがこんな奴は先生も初めて見た。」
卵を磨いていると八軒が走ってきた
八軒「汚くないのかこれ!?」
駒場「だからこうして全部丁寧に洗ってみがいてんだろ」
『八軒、何を思ってそういう考えしてるのか知らないけどさ、総排泄腔から出てきた卵を汚いから食べるの嫌がったりするのは生産者さんに失礼だし、産んでくれたニワトリにも失礼だよ』
[コケーッ]
『あ、コラ!』
ニワトリも怒っているのか、八軒をつつく。
八軒「うお!?痛ってぇ!おま、どっから…」
『ほら、八軒ニワトリも怒ってるよ。ちゃんと好き嫌いしちゃダメだよ』
八軒「チッ」
舌打ち…。何か僕悪い事言ったか…?
駒場「今のは別に水侍悪くねぇだろ。何水侍に舌打ちしてんだ。」
多摩子「そうね、水侍はただ生産者の想いやニワトリの想いを代弁しただけよね。舌打ちの意味あるのかしら?」
相川「俺も今の舌打ちはよくないと思うよ。」
タイミング良く?チャイムが鳴ったので今日の当番は終わった。
『…ニワトリさん、ゲージ戻ろっか。』
ニワトリさんをゲージに戻して先に食堂に行く。今日は卵かけご飯と魚と野菜だった。卵かけご飯にお醤油を垂らして混ぜて食べるととても美味しかった。
先程の言い方はやはり宜しくなかっただろうか。ハァ…とため息を着くと横にいた別府が「大丈夫?」と聞いてきた。
『平気…。』
僕は先にご飯を済ませ教室に戻り、座りながらうつ伏せになって考え事していた。
駒場「あんま落ち込んでんなよ。八軒だってそんな深い意味で舌打ちした訳じゃ無さそうだし」
『でも、なんか…やだ。』
お節介だと思われただろうか。なんて考えながら午後の授業も必死に取り組んだ。
◇