題名のない日々
□White Lie
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何の前触れもなく、その瞬間はやってくる。
「―ハル、ちょっとゴメン…」
俺に向かって伸ばされた腕は、俺を通り越して直ぐ横のCDラックを探り出す。
カチャカチャと数枚確認しているのを、何事もないようにやり過ごす。
お目当てのが見つかったのか、視界を横切るジャケット写真。
無意識に目で追った先に覗く、廻志の唇。
それを素直に欲しいと思うのは、変なんだろうか。
十年以上、俺の名前を呼び続けてきたその唇を望むのは、欲張りなんだろうか。
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