題名のない日々
□ハル麗らかにハナが咲き
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校舎を出て、歩き慣れた道を並んで歩く。
日は長くなったが、風はまだまだ冷たく体温を奪っていく。
「寒いなー…。早く暖かくなんないかねぇ〜」
「廻志…なんかオヤジ臭い」
「…失礼な。じゃ、お前も一緒だ」
「なんでそうなる…」
俺は横目でハルの表情を窺うが、ハルは特に見向きはしない。
喋る度に揺れる睫毛―。
白い肌に色付く唇―。
―頭をよぎる、あの日の過ち―。
「―…あ。」
ハルの足が止まる。
俺も歩みを止め、ハルの視線の先を追った。
桃色に色付き控え目に綻ぶ花。
「…桃…かな?」
「うん、たぶん。…咲いたんだ…―」
ハルの表情がぐっと和らぐ。
同時に感じる、仄かな甘い桃の香り。
―あぁ、ホラ。
こんなにも…、ハルは綺麗に笑うんだ。
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