お題小説

□恋・5題
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【眠る記憶の中で】



不意に。
ほんの僅か、君の姿が時折ブレる。

初めて出会ってから10年経つが、まだどこか幼さの残る童顔な君。


柔らかな栗色の髪。
(艶やかな金髪。)
大きなブラウンの瞳。
(涼やかなブルー。)
遠慮がちにはにかむ唇。
(悠々と孤を描く唇。)

似ているようで、まるで似ていない目の前の君。



「―‥骸。」

僕を呼ぶ声も、呼ぶ名も。
嗚呼、時折らしくもなく混乱する。


「また…初代のことを考えてた?」


眉尻を下げて困ったような、少し悲しげな色をその目に浮かべて笑って取り繕う。
ああ、その顔には見覚えが。


「骸。」
(「―――。」)



「骸。お前が好きなのは俺だって、信じていいんだよな?」


ああ、そんな事言わないでください。
僕が好きなのは、確かに君です。

だから。

だから、どうか君の手で。
この目障りな残像を消してください。

彼のアノ人のように、たまには強引に僕を奪って。



跪いて、キス。
見上げたボスは、二人に見える。

六道輪廻。

この能力を疎ましく思ったのは二度目だ。



何時かも判らないような、自分すら分からないような。
そんな記憶なんて沈んだままでいい。


ただ目の前の、この手に収まる温もりを与えてくれる君だけで。





.END.
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