cocoro

□白い花1
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その様子をルイは少し離れたところから見ていた。

黒く長い髪はふわふわに巻かれ、サイドで深い青色の大きめなリボンで一つにまとめられている。
ドレスはリボンと同じ、深い深い青。

ドレスアップしている姿を初めて見たルイは、一瞬誰だかわからなかったが、なぜかすぐにリンだとわかった。

慣れないパーティーだからだろう、見るからに緊張した面持ちで入口に立っていた。


(・・・あんな表情もするんだ)


令嬢達に目を向けたと思ったら、自分の格好を気にし始める彼女。
少し落ち込んでいるような様子だった。
自分の容姿に自信がないのだろう。

(見劣りなんて、してないのに)

むしろ厚い化粧で塗り固められた他の令嬢に比べたら、よっぽど自然体で美しいとルイは思った。

そしてふと、そんなことを思った自分に違和感を感じた。
誰かを見て素で美しいと思ったのは初めてだった。


無意識にリンへ近づこうと一歩踏み出した、その時。

滅多に見ない正装姿のアランがリンの額を小突いたのが見えた。
顔を上げたリンは、アランと二言三言交わすと頬を染めながら手を引かれてジル達の元へとエスコートされていく。


その最中、彼女に目を奪われる男性が数多くいたことも気付いていないようだった。


(・・・なんだろう、心にもやがかかったようなこの感覚)






ルイは感じた事のない感情に戸惑いながら、再び執事が招待したであろう「ハワード」という名ばかりに魅入られてやって来た貴族達への挨拶を始めた。













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