cocoro

□はじめまして
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キースの山崩れは、突然の出来事でほとんどの人が逃げる事すらできなかったという。

夜中に起こったというのも一つの要因かもしれない。

当然、騎士団はその知らせを受けてすぐに救助に向かった。

だが、城からキースまでは大きな山脈を越えなければならず、どんなに馬で疾走しても5日はかかる距離。
物資やらなにやらも一緒に運ぶと1週間以上はかかるらしい。

結果、騎士団が到着するころには生き埋めになった人はほぼ助からず、

救助活動というより死体を掘り起こす作業にほとんどの人員が費やされたらしい。

そんな混乱が続いている状況下で、なんとアランが彼女を城に連れて来た。



「・・・アランが?」

「そうです」

ルイは驚きを隠せなかった。

ジルはリンの淹れてくれた紅茶を一口口に含みながら、アランがリンを連れて来た日の事を思い出す。


ーーーー“どうしてわたし、いきてるの・・?”


痛々しいくらい、生気を失ってしまった瞳を、ジルはまだ忘れられないでいた。


「・・・リンは、ウィスタリア建国より古い歴史を持つ道場の血筋だそうです。
国としても、歴史ある武道の流派が絶えてしまうのは避けたい。ということで今の所唯一の継承者である彼女を、城に置く事にしました」

なるほど、とルイは思った。

ということはおそらく、ここにいるのは、彼女自身の意思ではないのだろう。

無理矢理ここに連れてこられた彼女は、今、何を思っているのか。






ーーーーその時から、運命の歯車は回り始めていた。










fin.
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