cocoro

□白い花1
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リンがお城に来て数ヶ月が経った。
夏の暑さもだいぶ落ち着き、次第に秋も深まってきた頃。

リンはジルの執務室でたまたま居合わせたレオから思わぬ事を聞いた。

「え・・・ルイ様のお誕生日・・?」

そう、明日はルイ=ハワード公爵の誕生日で、その誕生パーティーがハワード邸で開催される。
ルイとはまともに話をしたことはないが、ジルの執務室で会ってからは時々城内で通りすがりに挨拶を交わすくらいは関わりがあった。

昔から知り合いだというアランも招待されているようで、リンも一緒に来るのかとレオが尋ねたのだ。
しかしリンはそんな話全く聞いていなかった。


「そう。リンちゃん、もしかしてアランから何も聞いてない?」

「・・・聞いてない。忘れてそう。」

「たしかにね」


答えながら、明日の夜ならば公務も調整できそうだな、とリンが頭の中で考えていると、ジルが言った。

「リン、ダンスの経験はおありですか?」


ぴたり、とリンの動きが止まる。


「・・・(沈黙)」

「・・・なさそうだね」

「そのようですね」


実際リンはダ経験が全くない、と言えばウソになる。
しかしキースの学校で習っただけでカタチしか知らないし、もはやステップを覚えているかさえ怪しかった。

「ダ、ダンス踊れないと参加できないのでしょうか・・?」

でしたらお城に残ります、と言うリンにレオはそんなことはないと言う。

「大丈夫だよ。ただ、誘われたら「足をけがしてる」って言っておいてね」

「・・・はい。」

やはり貴族社会では”ダンスが踊れない”では通用しないようだ。

「ドレスはひとまずこちらで用意しましょう。
後ほど採寸の者を向かわせますので、騎士団の執務室でお待ち下さい」

「わかりました」



リンは2人に気付かれない様に小さく息をついた。





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