読書感想文

□水仙月の四日
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『水仙月の四日』(『注文の多い料理店』より)

…え?
『注文の多い料理店』って一話じゃないの?
あのお客さんがいっぱい注文を受ける…(塩とかクリームとか…)

と、疑問に思ってくださる方が居てくださったら幸いです。
何を隠そう、自分もその一人だったので(笑)

元々有名な『注文の多い料理店』は賢治が書いた作品集の表題作だったそうで。
この他にも
『どんぐりと山猫』『かしはばやしの夜』
など、面白い作品がたくさん収録されています。




さて、本題の『水仙月の四日』について。
物語は一人の雪童子の視点で展開します。

その眼下、雪の丘を歩いているのは「カリメラ」についてわくわくと想像を膨らませて歩く、
赤い毛布を羽織った小さな子供。

「カリメラ」とは今でいうカルメ焼きのことだそうですね。
砂糖をくつくつと煮立てて、
そこに重曹を入れて混ぜる…とできるらしい。
(本文中で語られる、カリメラを作る表現が本当に可愛くてあったかいです。原文でぜひ。)

灯夜も一度化学の実験で作りましたが、
重曹の入れすぎで苦くなって食べれたもんじゃなかったです(笑)



…長くなりました。
雪童子と子供に戻りましょう(笑)

雪童子は、子供には自分の姿が見えないにも関わらず、
どうしてか相棒の雪狼に取ってこさせたヤドリギの枝を子供の足元に投げ、
子供がそれを拾ったことに安堵する。


…なんだかここで、
雪狼が傍にいようとも、
一人で生きている雪童子の寂しさを感じてしまいます。


そうこうしているうちに、
曇り始め、雪を散らせ始める空。
そして、上司である雪婆んごが訪れ、雪童子に早く雪を降らせるよう言い渡します。

風も雪も強くなっていく中、
雪童子は歩けなくなって泣いている
さっきの子供の声を聴いて…、

雪婆んごに従って子供を見捨てるのか、
それとも逆らって子供を助けるのか。
雪童子は悩みます。


彼がどちらを選ぶのか。
子供は助かるのか。

それはご自身の眼で見て、
心で感じてください。


この雪童子の、
子供に親愛の情を伝えたいのに伝わらない、
そこら辺の切なさがこの物語のカギではないかと自分は思います。


某文学少女のT子さんなら、甘いのに、どこかほろ苦い、まさに「カリメラ」のような味がする物語と言ってくれるのではないでしょうか。


ほんの短い作品ですが、児童向けとは思えない読み応えのある作品です。

時間が出来たときのお供にぜひ。
 

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