名探偵コナン

□それじゃあ種明かしをしようか
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ジョディ先生から秀一さんが亡くなったと聞かされてから、数週間が経った



たとえ姿が変わろうとお前のもとに戻ると約束してくれた彼は、

永遠に私の前から姿を消してしまった



そんな心にぽっかりと穴があいた私に、

コナン君が会わせたい人がいると言って呼び出されたのはつい先日



そうして私は、沖矢昴という人に出会った



彼は、紳士という言葉が似合う人だった


秀一さんと似ても似つかない顔に、声、話し方


それなのに彼に関わっていくうちに、どんどん惹かれていくのがわかってしまった




微かに香る、煙草の匂い


ふと見せる悪戯な笑み


バーボンを好むと言った彼のその言葉が、態度が、行動が



全てが秀一さんにリンクして





「結さん、今日はどうなさったんですか?」





気がつくと彼の住む家に行っている自分に、彼を重ねてしまっている自分にいらついた




『…私、…嫌な奴なんです』


「?」


『恋人を、亡くして、…そんなに経っていないのに』



こうしてここに通ってしまっている、と呟けば、彼はひどく困惑した顔をする



『出会ってすぐの沖矢さんにこんなこと話しても、困らせるだけなのは重々承知しています』


「…」


『でも…それでも、私は、あなたにこの気持ちを伝えます』



振ってもらうために


こんな、恋人を失ってすぐ好きな人を作ってしまう軽い女に少しでも、お灸を据えてもらうために




自分の身勝手さに泣きそうになっている私は、言葉を紡ぐ




『…あなたが、好きになってしまいました』


「結さん」


『だからお願いします、…振ってください』



ふと、微笑んでそういうと、沖矢さんは予想外の行動にでた




「…君は、わかっていると思っていた」


『…?…っ、沖矢さ』


「結」




口調が変わったことに幾分か驚いていると、私の名前をいつものようなさん付ではなく呼び


腕を強引に引っ張り、私を抱きしめたのだ



その一連の動作が、秀一さんのするそれと同じで




「姿が変わろうとも、お前のもとに戻ると言ったのを忘れたか?」


『…っ!まさか、』


「最後に抱きしめた時より、小さくなった…」



顔や声は沖矢さんなのに、口調は秀一さんそのもので


思ってもいなかったその事象に、とっくに枯れたと思っていた涙が溢れて





「そんな顔をするな」


『秀一さんっ…!』


「ああ、俺だ」




遅くなってしまってすまない、と言った彼は、首についたチョーカーを触り、何かの電源を落とす



「結」


『っ!ふえ、』


「ふっ、泣き虫なのは変わらないな」



戻った声にまた涙がこぼれて止まらない私を強く抱きしめて


秀一さんはやさしく、甘いキスをくれた












それじゃあ種明かしをしようか







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