幸せと不幸

□第5話
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理解できてなく、少し焦っているティキに説明をする。

イノセンスを壊す理由はこの狼に食べさせるため。
一か八かになる賭けになる。
失敗すればこの狼は死んでイノセンスを取り返すことは難しくなる。
粒子になっても一応形は戻すことはできる。
ただ、身体の中にあるとなれば別の話しだ。

成功すれば扇だったのが対アクマ獣になるだけ。
といっても、多分寄生型だろう。
全て私の身体の栄養分から狼は成り立つ。


「なんで壊すのが俺なんだ?」
『私が壊すと教団に疑われるし……それに、私だと絶対の力が働いてイノセンスを完全に破壊しちゃう』
「つまり…少し手加減をして壊せと…」
『学なしの割りには勘が鋭いね』


一言余計だと言われ、私のイノセンスをティキが受け取る。

そして、イノセンス破壊の力が働き、ティキの手の中に粒子がたまる。
本来ならここでイノセンスは破壊されるはずだけど特殊なことに粒子になったぐらいじゃ壊れない。

そして、狼の口に手を添えて開かせる。
  

『ティキ、今のうちに入れて』
「おう」


口の中にイノセンスを流し込み、飲み込ませる。

飲み込んだと思われた時、狼が倒れこんだ。


「失敗か?」
『…わからない』


しゃがみ込んで心臓のところを触るが、心肺停止してる。


『イノセンス……発動』
「…!!!?」


狼の心臓あたりが光ったと思ったらむくっと起き上がりだした狼。
瞳は血を零したように赤に染まってる。


〔…ふぅ、完璧だな〕
『よかった。成功だね』
「まじかよ…こんなのありか」


ノア側からしたらこの進化は不利だ。
でも、ノアは私も同じ。
このイノセンスはもう純粋なイノセンスではなくノアに侵されてる。

私のイノセンスは特殊。
だけど、ハートかどうかはわからない。
違うだろうけど…。


〔我の名前は?〕
『一人称も変わるのか…どうしようかな。そのままの感じで…ウラフでいいかな』
〔御意〕
「随分と変わったな…前はおちゃらけた感じだったのに」
『多分、この狼の人格が混ざってるんだと思う。真面目な狼だったんだよ』


そう説明して狼を見ると正解と言わんばかりに頷いた。
多分、変化は自由だから人の姿にもなれるはず。


「てか…狼は冗談だったんだが」
『は?』
「ホントはこっち」


ティキは次は本当に猫を出した。
黒猫だ。
こちらも目が紅い。
逆に不思議だけど、そのミステリ感が好き。


『じゃあ…もう1つも猫にしようかな…』
「は?」
『流石にさ、任務の時は猫にできないけど教団にいる時だけ猫にして、任務の時はチョーカーにしとく』


猫を抱きしめて、もうひとつのチョーカーについてるイノセンスを渡す。
そして、粒子にしてもらい猫の口の中に入れる。

さっき同様、心肺停止になってしまったがイノセンスを発動させるとむくっと起き上がった。


〔…やっとか〕
『これで喋れるようになったか……名前は変えるね……えっと…ブラッド……』
〔御意〕


スィクル否、ブラッドは昔からこんな感じだから違和感はない。
でも、今頃になって変えるのも変な感じ。


「ん、そろそろ夜明けだな」
『そろそろ帰ったほうがいいんじゃない?』
「そうだな…また来る」
『教団には来ないで』
「いっそのこと見つかって欲しいんだけどな」
『千年公に殺されるよ』
「それはゴメンだな」


わざとらしくヤレヤレと言うふうに首を振る。
そして、ロードの扉を開けて、手を振って別れた。


〔室長殿に報告しなければな〕
『大丈夫でしょ。臨界点は超えてる』
〔まぁな……〕


そして、ブラッドとウラフを連れて廊下に出た。



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