とても天気のいい日が続いて数日前まで蕾だった桜が一気に咲き誇っていた。
お花見に行こう とお妙は万事屋を尋ねたのだが。


「あ、用事があって行けないアルー」
「あ、僕も用事があって」

 四人で行こうと誘ったお妙に神楽と新八はまるで棒読みでそう返した。
『銀ちゃんはヒマ人マダオだから、二人で行くといいアル』と二人に勧められた。
半開きの目をしたままの銀時は イスから立ち上がると 神楽の頭をぺしっと一つ叩いて お妙と万事屋を後にした。


 来ない理由は銀時もお妙も分かっていた。
本当は用事なんか無くて ただ私達に気を遣っただけな事を。




 結局、万事屋から一番近い所にある公園で足を止めた。
近いといっても 歩いて20分程の場所。
いいのか、と訊ねる銀時にお妙はいいんですよ、と笑いながら返した。

 通りから少し奥に入ったこの公園。
滑り台とブランコしかないが 真ん中にある大きな一本桜の木がとてもよく映え 風に吹かれて揺れている。


「綺麗ですね」
「そうだなァ」


 二人は桜の木の下に立ち 見上げた。
その先に青空があるなんて思わないほどに 花たちが二人を包みこんでいた。


「お妙」

 名前を呼ばれて銀時を見ると ん、と左手が差し出されていた。付き合ってから二週間経つが、そうゆう事をしたことがなくて お妙は心から嬉しかった。
そっと自分の右手を伸ばして 手を繋いだ。



――大きくて、あたたかい。

――小さくて、やわらけェ。





 満開の桜の木の下 少しだけ頬を染めた男女の姿が とても初々しく映っていた。



Fin

銀さんが神楽の頭を叩いたのは、子供のくせに俺たちに気を遣うな な感じに解釈して下さい(^^)
キスでもさせようかな〜と思ったら、桜の花言葉の一つに『純潔』があったので、やめました。
なんか桜らしい花言葉に、知ってからうっとり( 〃ω〃)

手を繋ぐのはギリギリセーフってことで許して下さーい! 

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