短編

□れっつトランプ!
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「ねぇねぇ、さっくん」
「なんだ?」
「なんでもない。」
「何でもないのに呼ぶな」
「えー、いーじゃん呼びたいんだから〜」


そう言って、名無しさんの頬が膨れる。
じゃあ、何だったらいいのかとうんうん唸って考え始めた。
どうやら、名無しさんは「さっくん」という自分で考えたあだ名をひたすら呼びたいらしい。
本当に変な奴だ。
でも、もしかしたら俺にかまってもらいたいのかもしれない。


「ねぇ、さっくんさっくん」
「…なんだ?」
「……つまんない。」


やっぱり。


「じゃあ、何したい?」
「う〜ん、あっ、トランプしよう!私持ってきたんだ〜」


自分の横にあった黄緑のリュックを探り、じゃ〜んと俺の前に掲げたのはペンギンのトランプ。
ペンギン好きな俺はそれに反応せずにはいられなかった。


「どうしたんだそれ…!」
「えへへ、いいでしょ。この間幸次郎と行った水族館で売ってたの!一枚一枚絵柄が違うんだ。」
「へぇ〜。見せてくれよ。」
「はい、どうぞ。」


トランプを受け取った俺は思わず感嘆の声をあげた。
ペンギンの種類は13匹しかいないが、それぞれ違ったポーズが4枚あった。


「さっくん気に入るかなって持ってきたんだ」
「あぁ、すっごくかわいい。じゃあ俺が配るよ。…そうだ、何やるんだ?」
「普通にババ抜きしようよ」
「おっけー」


返事を返して配り始めた。
配っているときに、ふといい案が浮かんだ。
ゲームを面白くさせるいい案が。


「え、ほんとに?う〜ん…でも面白そう」
「だろ?ありきたりだけどな。」
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