月夜へ贈る戀の唄

□卯月の章
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ー 江戸時代 ー


此処は京の都、賑やかなこの町の山奥に紅い鳥居の立つ綺麗な神社がある。

町人は時折、此処へ訪れる。

この神社は町じゃ有名な神社である。

神社と聞いて皆が思い付くであろう一般的業務、御守りや御札の販売は勿論の事、憑き物祓いまで請負ってくれるという評判の良い神社。

然し、憑き物祓いを行っている神社は何も此処だけではない…にも関わらずこの神社には各地から様々な依頼者が赴く。



その理由は一つ。

【 口寄せ 】である。



偏に口寄せと言えど種類がある。

神霊に伺いをたてるのが
神口( かみくち )

死者の言葉を伝えるのが
仏口( ほとけくち )

そしてこれを自らの体に降ろし神の言葉、死者の言葉を代弁するのが巫女の務めである。



これを求めて赴く参拝者が多い神社だが…最大の理由はここからである。

本来、口寄せとは巫女の体を通じてこそ成せるもの。

しかしこれを自らの体を通さず神や死者をそのままの姿で実体化させ降ろす巫女が存在する。

それが此処、白椛神社の巫女。




 
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