ロック×レヴィ

□ロックとレヴィのお泊まりデート
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ロックとレヴィのお泊まりデート

「…あのなぁロック。お前いい加減にしろよ。」

言われると思った。
言われると思ってたさ俺だって。

だけど。

「…悪い…レヴィは嫌がると思ったんだけど、その、やっと、さ、俺としては、もう、本当にやっとここまで来たって気持ちなんだ。だから、その…」

先日、レヴィは突然、投げやりに「わーったよ!!付き合ってやらぁ!!お前が好きだよ!あーっ!!チクショウ!!」というなんだかもうレヴィらし過ぎる返事をくれた。

それからデートを重ねて、今日という日がやって来た。

それなのに、レヴィの言葉と視線にしどろもどろになってしまう。そんな俺を冷たい目で眺めていたレヴィはふいっと顔を背け、グラスと酒瓶を取り出すとソファにどっかりと座った。

そして酒をなみなみとグラスに注ぎ、一気に飲み干して大きく息をはいて大きな声で笑い出す。

「あははっ!あーあーっ!んっとにテメェって野郎はどうしようもねぇな!」

空になったグラスにまたなみなみと酒を注いでは一気に飲み干す。笑い声がおさまってからもレヴィはグラスをあおりながら八重歯をみせておかしくてたまらねぇという笑顔を浮かべていた。

「ガラじゃねえってんだよ。このボンクラ。テメェの部屋でもアタシの部屋でもさびれたモーテルでもいいのによぉ。あははっ!こぉんないい部屋で?ック!くっくっく…ぶはっ!あーっはっはっはっは‼」

サンカンパレスホテルのスイートとはいかないまでも、それなりにいい部屋を取った俺はレヴィの笑顔に複雑な、それでも嬉しさが込み上げた。

俺も笑って「やり過ぎだよな。けどこんなのもたまになら悪くないだろ?」そう言ってグラスを取り出しソファに座って酒を注いだ。

「…隣にすわんのかよ。」

こういう時のレヴィは本当に可愛い。

「駄目かな?」

レヴィを見つめてそう言うとまた酒をあおって飲み干すと「…駄目っつーわけじゃねぇよな、あー、そりゃそうだ。…そういう仲になった、んだからな。」

可愛い。本当に可愛い。なんだこれは。あまりの可愛さについ手を握った。レヴィはビクッとして赤い顔で俺を睨んだ。睨み付けるレヴィの目線を真っ直ぐ見つめて握った手を口元に寄せ、指先にキスをした。

「…お前、本当に馬鹿だよな。」

絞り出すように憎まれ口を叩くレヴィ。だけどその手を振り払わない。

「馬鹿だよ。大馬鹿さ。けどそれで良かったと思ってる。心底な。」

自然と微笑んでそう言うとレヴィは黙り込んでうつむいた。

「アタシは、お前に、そこまで想われるような人間じゃねぇよ。」

レヴィの中にいる、潔癖な少女が顔を出す。すれきって悪である事を受け入れたレヴィの中には驚く程潔癖な少女が隠れている。

「けど付き合ってやらぁって言ったろ?レヴィ。どんな人間でもお前はお前だ。どんなレヴィでもいいんだ。好きだよレヴィ。レヴィがどう思おうと俺はレヴィがいい。レヴィでなけりゃ駄目なんだ。」

いつもと同じ言葉を繰り返した。レヴィの頑なな殻にそっと触れ続ける。力尽くでレヴィの殻に挑んでも俺にはそれを砕いてその手を取り俺の側に引き寄せる事は出来ない。

だからそっと触れ続ける。
そうして少しずつその硬い殻を、溶かしていくしか俺には方法がないんだ。それはレヴィが一番恐れ、嫌がる方法だとわかっていても、俺にはそれしか出来ない。

そんな事を考えているとレヴィは顔を背けタバコを深く吸って煙を吐き出しながら言った。

「んで?どうすりゃいい?」

思わず吹き出してしまった。それを見てレヴィは怒ってテーブルを蹴り飛ばす。

「何がおかしい。…こんなんどうすりゃいいのかわかんねぇんだよ。さっさと押し倒してくれりゃいいのによぉ。このインポ野郎。」

悪態をつくレヴィを見つめて笑って言った。

「どうすればいいかなんて俺にもわからないよ。あのさレヴィ。俺がどれだけ緊張して舞い上がってるかわかるか?頭が真っ白だよ。ただここにレヴィが来る事を承諾してくれて隣で酒を飲んでいる。今はそれだけで十分なんだ。もう少しこうしていたい。どうするかは、そうだな、したくなったら仕掛けるさ。」

照れ笑いを浮かべてそう言うとレヴィはまた笑った。

「んっとにめんどくせぇ野郎だなお前は。まあいいけどよ、 いつまで手ェ握ってんだ?」

「まだ握っていたいんだけど、いいか?」

「…っ…あー、あーあー、かまわねぇよ!勝手にしろ!クッソ…なんなんだよガラじゃねぇ…やってらんねぇ…やってらんねぇ事ばっかりしやがってテメェはよぉ…あー!んっだよ‼その顔‼ぶっ飛ばされてぇのか⁉あぁっ⁉」

ヤケになって、それでも承諾してくれたレヴィは小声で悪態をついてから俺を睨んで怒鳴った。顔が真っ赤だ。物凄く可愛い。俺は笑いをこらえてレヴィを見つめて答える。

「ぶっ飛ばされたくないよ、でも最近はあまりぶっ飛ばさなくなったよなレヴィ。俺はそれが嬉しいんだ。にやけちまうのは大目に見てくれないか?どうにもならないんだ自分でも。嬉しくて、さ。」

そう言って握っていた手をギュッと強く握った。レヴィはビクッとして、目を見開く。それから顔を背けるとまたグラスをあおった。

「…なあ、もう、アレだ、無理だ。このままなのは…余計、キツイ…テメェはアタシになんか恨みでもあんのかよ…」

もう我慢が出来ない。俺は声を出して笑って顔を背けたままのレヴィを抱き締めた。

「恨みならあるかもな!でも別にそういうつもりでレヴィに接してる訳じゃない。ただ頑張って口説いてるだけだ!好きだよレヴィ!大好きだ!レヴィはいつも怒るけど可愛いんだ、レヴィは本当に可愛い。怖くて強くて面倒臭くて可愛いんだ。だから俺はレヴィが大好きだ。」

思っていた事を全部言った。腕の中でレヴィは微動だにしない。振り払わない。ぶっ飛ばさない。もうそれだけでレヴィの返事なんだ。やっとそれがわかった。

「…テメェ…ロック…頭わいてんのかよ…」

ああもう本当にレヴィはレヴィだ。腕の中に大人しくおさまっていてくれても口から出るのはそんな言葉ばっかりで、でもそれがレヴィだ。俺が惚れ込んだ女だ。

「わいてるよ、知ってるだろ?俺はイカれてるんだ。頭がおかしいんだよ。それくらいレヴィが好きなんだ。あははっ!ごめん!嬉しくて笑いが止まらないよ!なあレヴィ、キスするけど殴らないで欲しいんだ。一応頼んでおく。」

腕の中で微動だにしなかったレヴィがビクッと震えた。可愛い。振り払わない。逃げないでいてくれる。

背けられたレヴィの顔をグッとこちらに向けさせてキスをした。何度も何度もキスをして舌を入れた。レヴィは逃げない。握った手を強く強く握り締めて何かを堪えてくれている。多分殴りたいのを堪えてくれているんだろうなぁと思ってまた笑ってしまったけどキスはやめなかった。

「…っ…しつ…っこい…っ‼」

キスの隙間からレヴィが言った。

「ごめん、嫌だよな。でももう少し。」

俺はそう言ってまたレヴィにキスを繰り返した。



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