ロック×レヴィ

□ロックの場合。その五。
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ロックの場合D

いつも通りの仕事からの帰り道、運転しながら何気なくロックは言った。「考えたんだけどさレヴィ。やっぱりこの間のデートみたいなのは俺達にはハードルが高すぎるしガラじゃなさすぎて楽しめないみたいだから、うん、もう少しさ、付き合ってるってことに慣れてからまた再挑戦したいと思うんだけどいいかな?」レヴィは加えていたタバコをポロリと落とす。「わっ!危ないな、火傷するところだった。大丈夫か?」「テメェの頭が大丈夫か?なんだと?誰がなんだ?ああ?」「え、だって告白してオッケーもらって一応デートもキスもしたろ?俺達。それって付き合ってるってことじゃないのか?」「…その後、断ったはずだ。」「俺はそれを承諾してない。だから別れてない。付き合うってのは相手が別れる事に同意しなけりゃ解消出来ないもんなのさ。俺はしつこいよ。絶対にレヴィがいいんだ。だから頑張らせてくれよ。頼む。」「…勝手にしろ。」「うん、勝手にするよ。好きだよレヴィ。お前が思ってるよりずっと俺はレヴィが好きだ。それだけは忘れないでくれ。」

レヴィは訳がわからなかった。あれだけの拒絶をし、排除したはずのロックがこうもあっさりと自分の中にまたおさまってくる。苛立つ暇さえない程に真っ直ぐに自分に手を差し伸べ続けるとロックは言う。意味がわからない。何故そこまで。レヴィは自分の感情と向き会うのが苦手だ。思考を放棄し空っぽになってその瞬間を楽しむ自分になって本当の自身の心は殻に閉じこもる。そうやって今まで生きてきた。そんなレヴィにロックは真っ直ぐ向かってくる。突き放しても突き放しても、それでも自分でなければ嫌だと、そう言って向かってくる。「テメェは本当にめんどくせぇ野郎だな。」レヴィは呆れてそう言った。ロックは笑って「レヴィも相当なもんだよ。面倒くさくて乱暴で怖くて可愛い。まったく大変だよ。でもお前に惚れちまった事を後悔はしてない。」そう言った。レヴィはもう、黙るしかない。「でさ、これからは一応、仕事以外は全部プライベートな関係、つまり恋人同士の時間だと俺は思ってるから、今まで通りでいい。そこに俺がちょっとなにか仕掛けるかもしれないけど、その時は殴ったり慌てたりしていいよ。俺は打たれ強いから。」黙り込んだレヴィにさらに言葉を続ける。「好きだよレヴィ。大好きだ。」レビィはぐったりとうつむいてつぶやく。「めんどくせぇ…」それを見てロックは大きな声で笑った。レヴィが小突きいつもの掛け合いが始まる。これでいい、いきなり恋人らしくなろうなんて無理な話だ。そしてレヴィ相手に殴られずにそうなりたいなんてこれまた不可能な話だった。ロックは焦らないでゆっくりレヴィの殻に触れてそこから少しづつはじめようと決めた。

「なかなか頑張るなロック。」ふいにダッチがそう言った。「えーと、なん、の事?」そう言ったロックを見てダッチとベニーは笑った。「ま、アレが相手じゃ無理もねぇ。まったく命知らずな野郎だよ。俺としちゃ仕事に支障がなけりゃ何でもいいが、お前、青痣だらけだぜ。」ダッチはいつもの調子でそう言った。確かに最近のロックには生傷が絶えない。仕事の終わりや空き時間に少しだけレヴィの手を握ったり側に座って好きだと言ったりしては殴られ蹴られているからだ。「はは、参ったな。お見通しか。」「当たり前だ。俺は雇用主だぜ。従業員の人間関係にも気を使うんだ。せいぜい頑張るこった。ただし、仕事にも俺たちにも関係がねぇ。そこんとこはしっかりわきまえろボーイ。」ロックは笑って「了解。仕事はきちんとやるよ。それは俺のポリシーでもあるからな。」そう答えるとまたダッチとベニーは笑った。ふたりに気付かれている事をレヴィが知ったら大変な事になるだろう。そのあたりはソツのないふたりの事だ、心配はいらないな、とロックは思って少し笑った。

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