ロック×レヴィ

□ロックの場合。その2
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ロックの場合A

「レヴィ明日の休み、予定がないなら一緒に出掛けないか?」ダッチは船のメンテナンス、ベニーは機材の買い出し。レヴィとふたりきりの事務所でロックは言った。ソファに寝転がっているレヴィはチラとロックを見やり「どこに行くってんだよ?」そう言ったレヴィの頬は少しだけ赤くなっている。ロックは本当にレヴィは可愛いなぁと思いながら「そうだな、デートらしい事をしたい気もするんだけど、映画でも見に行ってまともな店で食事をするっていうのはどうかな?」そう提案した。レヴィはデート、という単語をぬけぬけと言ったロックにイラっとしつつ、胸が高鳴る自分が一番ムカついていた。「ガラじゃねぇよ。んなもん。」読んでいた雑誌に目を向けレヴィは言った。雑誌の内容など頭に入ってはいない。「それはそうだろうなぁ。でもデートってのはガラじゃない事するからいつもと違う楽しさがあるんじゃないか?」またロックはデートという単語を出す。「あーっ!わーったよ!行きゃあいいんだろ?言っとっけどドレスコードのある店はごめんだからな。」ソファをドカッとブーツの踵で蹴りながら雑誌を見たままレヴィはそう言った。ロックは笑いをこらえるのに必死だった。なにせこういう時のレヴィは分かり易すぎる程、照れて、可愛いのだ。あー、可愛い。本当にレヴィは可愛い。ロックはそう思っていた。いつもと違う可愛らしいレヴィを見ているとつい笑いたくなってしまう。しかしここで笑ってしまえばレヴィの機嫌を損ね、デートがおじゃんになるのもロックはわかっていた。「じゃあ明日、そうだな、あまり早いのは眠たいだろうから14時に迎えに行くよ。それでいいか?」ロックはつとめて普通に言うと「なんでもいい。勝手にしろ。」といつまでもページのめくられない雑誌を見たままレヴィは言った。あー、可愛い。ロックはまたそう思ってこみ上げる笑いを必死で隠した。

眠れねぇ。レヴィは苛立ちベッドで何度も寝返りをうった。ちきしょうなんだってんだよ、映画行って飯食うだけじゃねぇか、それがなんだってこんな…っ「あーっ!!やってられねぇ!やってられねぇ!やってられねぇ!!」そう叫んでベッドから起き上がりビールを飲んだ。レヴィは自分がムカついて仕方ない。「クッソ…っ!」ドカッとベッドに座って頭を掻いた。長い夜になりそうだ、レヴィはそう思って余計に自分に腹を立てた。

時間になってもアパートの下に降りてこないレヴィを迎えにロックは階段を上がってレヴィの部屋をノックした。「レヴィ?起きてるか?」そう声をかけると「あと10分待ってろ!」と今飛び起きた音がした。ロックはなんとなくこうなる事がわかっていた。笑って「わかった、下の車で待ってるから、そんなに急がなくていいよレヴィ。」扉の前からそう声をかけ、車に戻るとタバコに火を付ける。そして小さくククッと笑った。あー、レヴィは可愛い。またそう思ってガサツにわりぃ!寝坊した!と降りてくるレヴィを想像して笑って待っていた。さてこの予想は当たるかな。ロックはウキウキしていた。当然だろ?初デートだぜ?そんな気持ちだった。とにかく何があっても爆笑しない事だ。ここだけは我慢しないとそこでデート終了、ぶっ飛ばされてさようなら、だ。気を付けよう、目を閉じて深呼吸する。ロックも昨日はなかなか寝付けなかった。そして今も浮かれながら緊張している。初デートなんだ、当然だろ?ロックはそう思って心を落ち着ける。ドカドカと階段を降りてくる音がしてレヴィはだるそうに嫌そうにしかし早足で車に乗り込むと「わりぃ、遅れた。」と無愛想に言った。想像よりも可愛くてもうロックは笑いそうだった。しかしサラリーマン時代に鍛えた、笑ってはいけないシチュエーションに耐え自然に振る舞う技術を駆使し、普段どおりに「いや、大丈夫だよ。映画、何見ようか?一応レヴィが好きそうなのをふたつみっつ選んでおいたんだけど、そこ、チラシあるからみてくれよ。」そう言った。日本のサラリーマンを舐めるなよ。あきらかにズレているカツラを被った取り引き相手と丸一日一緒だった事もあるのだ。まさかデートで役に立つ日が来るとはロックも思っていなかったが。レヴィはチラシを手に取る。確かに、レヴィの好みから外したセレクトではない。昨日今日考えたわけではないことがこれだけでわかる。レヴィの好きそうなものを選んでそして休みが重なるのを待っていた、という事だろう。レヴィは舌打ちし、その中の1枚を差し出した。「ん?ああ、これか。俺もこれが良いかなと思ってたんだけどちょっと悩んじゃってさ。確かそれの上映時間は、16時過ぎの回だったはずだから余裕で間に合うよ。」あまりにもいつも通りに振る舞うロックにレヴィはイライラした。何故、自分だけが。お前アタシに惚れてんだろ?ならもっとうろたえたりしやがれ。なんでアタシがこんなんならなきゃならねんだ。イライラムカムカ、そして、ドキドキ、しながらレヴィもタバコを咥え火を付けた。「んで?飯は何食うんだよ。」フーッと煙を窓の外にはきながらレヴィは言った。「ああ、昼は映画館で軽くホットドッグでも食べよう。そこまでゆっくりできる時間じゃないからね。映画の後、一応レストランを予約したけど、ドレスコードのあるような店じゃないから安心してくれよ。」少しだけ照れながらロックは言った。張り切っているのが丸わかりだからだ。それを聞いたレヴィはまた舌打ちをして「お前、よくやるな。」と呟く。ロックは少し笑って「まあな、自分でもそう思う。舞い上がってるんだ。仕方ないだろ?初デートなんだからさ。」そう言った。レヴィは窓の外に向かってタバコをふかす。バックミラーをチラッと見るとレヴィの耳は赤く染まっていた。ロックは笑いをこらえる。可愛い。可愛いって言うと怒るんだもんなぁ。まあそこがレヴィの可愛いところだけど。運転しながらロックはそう思った。体ごと窓の方を向きタバコをふかしてレヴィはムカつきすぎて暴れ出したくなっていた。ガラじゃねぇ。やってられねぇ。馬鹿馬鹿しい。クソッタレ。「レヴィ、声、もれてる。せめて思うだけにしてくれないか?さすがに傷付く。」ブツブツ文句を言うレヴィにロックは言った。

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