ロック×レヴィ

□ロックの場合。
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ロックの場合@

「俺さ、レヴィ。今に不満があるわけじゃないんだ。ラグーンでレヴィ達となんだかんだ危ない橋渡りながら商売して、イエローフラッグや事務所で酒飲んでさ、本当になにも不満なんかないんだ。」珍しくロックの部屋でレヴィとふたりで飲んでいる時にロックが言った。レヴィは眉をひそめ「なんだよロック、気持ち悪りぃな。だからなんだってんだ。」そう言ってビールを飲む。そんなレヴィを横目にロックは言った。「不満があるわけじゃない、本当にこのままでも良いんだ。だからレヴィ。レヴィが気に食わなければ聞かなかった事にしてくれて構わない。」「意味がわからねぇ。もったいつけてんじゃねぇよ。」苛立ったレヴィがロックを見る。ロックはレヴィを真っ直ぐ見つめて言った。

「俺、レヴィが好きだ。」

ロックは言葉を続ける。「その、仲間として、だけじゃなく、そういう意味で、だ。」レヴィは一瞬目を丸くしてフッと笑ってタバコを取り出す。「なぁんだよロック。お前、アタシを抱きてぇのか?」笑みを浮かべながらタバコを咥え火をつけた。ロックは少し慌てて「いや、そういう事じゃなくて、まあ、全くそう思ってないと言ったらそれは嘘になるけど…。」そうバツが悪そうに頭を掻いて俯いた。レヴィはタバコをふかし、どこか遠くを見て言った。「っは、くだらねぇ。惚れたはれただ言わねぇでヤリてぇならそう言やぁいいじゃねぇか。」ロックは視線をレヴィに戻し、静かに言った。「ヤリたいんじゃない。好きなんだ。俺はレヴィが好きだ。勘違いしないでくれよ。レヴィはいつも俺の前でパンツ一枚で平気でうろうろしたりする。そういう時、別に変な事を考えたりしてるわけじゃない。あんまりにも堂々としてるからな。そんな隙もない。」レヴィは決してロックを見ない。タバコをふかし黙っていた。「レヴィ俺は…」「ロック、もういい。」言いかけたロックの言葉を遮り扉に向かって歩き出す。「なら、お前はどんな時にアタシを抱きてぇと思うんだ?」背中を向けたままレヴィは言った。ロックは少し考えて下を向いた。「…思い、出した時、かな。」後ろ頭を掻きながらそう答えるとレヴィは突き放すように笑って「っは、ムッツリ助平だなぁロック。」そう言った。「…自覚はあるよ…。」苦笑して言うロックをしりめにレヴィは扉を開けて廊下に出る。そして扉が閉まる隙間から「…考えさせてくれ。」そう小さく言って扉が閉まった。レヴィが出て行った扉をしばらくの間見つめてロックはベッドから立ち上がり冷蔵庫からバドワイザーを取り出した。缶をあけグビグビと半分ほど一気に飲み干し「っはぁ…。」一息ついて残りを飲み干して缶を片手で握り潰す。そしてベッドに戻りうつ伏せに倒れ込むと頭を掻きむしった。「やっぱり言うべきじゃなかったのか?いや、でも、あーっ!くそっ!!」ロックはひとしきりベッドで身悶えし、仰向けになってため息をついた。言ってしまったものは仕方がない。そう自分に言い聞かせて両手で顔を覆った。

レヴィの態度は一見いつも通りだった。けれどもロックにはその些細な違いがわかる。さりげなくロックの隣を避け、ダッチやベニーを間に挟む。ふたりきりのときにはあまり目を合わせない。ロックは自分のセリフを思い出す。レヴィが気に食わなければ聞かなかった事にしていい。確かにロックはそう言った。そういう事か。ロックはそう思い、少し笑ってタバコに火をつける。まぁいいさ、こうなる事は分かっていた。分かっていて言った事だ。きっとレヴィの態度もそのうち元に戻る。なかった事にすればいい。そんな事を考えながらタバコを深く吸って煙をはいた。

レヴィは散らかった部屋に戻り、足元の物を苛立ち紛れに蹴り飛ばした。ロックがあんな事を言うから、自分はどうしたいのかわからなくなった。考えても、たどり着きたくない答えが導き出され余計に苛立つ。「…ずるいぜ、ロック。」部屋に立ち尽くしレヴィはそう呟いた。あの告白の日から、レヴィは苛立ちっぱなしだった。ロックに近付きたくない。腹が立つ。それは苛立ちなどだけでなく、胸の痛みを伴っていた。それが余計にレヴィを苛立たせる。「…やってられねぇよ。ちくしょう。」レヴィは戻ってすぐの部屋を出て行った。

深夜というよりもはや明け方、ロックの部屋をレヴィが訪れた。グルグルと考え込んで眠れずにいたロックは驚いてベッドから跳び起きる。「よお。」レヴィは入り口の縁に腕をかけもたれながら言った。片手にはほとんど残っていないバカルディの酒瓶が握られている。「こんな時間にどうしたんだよレヴィ。」ロックがベッドから立ち上がりレヴィに歩み寄るとそれを遮るように酒瓶の残りをグイっとあおった。レヴィの目は色をなくしている。「レヴィ酔ってるな?しかもあまり良くない酒だ。」ロックはレヴィの前に立って言った。そのロックの横をスイッと通り抜けレヴィはロックの部屋に入って行く。ロックが振り返るとレヴィはベッドの側に立ち、ガンベルトを外して無造作に床に落とす。そしてタンクトップを脱ぎ捨てベルトを外しだす。「お、おい!レヴィ!一体何を…っ⁉︎」ロックは服を脱いでいくレヴィの後ろ姿を目にする。ストンとショートパンツを下に落とすと最後の1枚に手をかけた。ロックは慌ててその手を掴む。「何やってんだよレヴィ!やめろ!」振り向きもしないレヴィにそう怒鳴る。レヴィはその手を乱暴に振り払い、下着を脱ぎ捨てロックを向き直った。「ほら、抱けよロック。」完全に目が座っている。ロックはため息をつき、目を覆うように片手を顔につけ、そのまま前髪を掻いた。「違う。そういうんじゃないんだレヴィ。頼むよ。服を着てくれ。」ロックは心底困った声を出しそう言った。「ああ?女が裸で誘ってんだ。恥かかせんじゃねぇよ。」レヴィは淡々と言う。ロックは流石に腹が立ってレヴィをベッドに押し倒した。「そうこなくっちゃなベイビー。男の子だろ?おったてて打ち込みなよ。あんたの弾をさ。」そう言ったレヴィを睨め付けるように見つめ「レヴィこれが答えなんだな?」ロックはそう問うた。「何のだよ。」「とぼけるな。俺はお前が好きだと言った。お前は考えさせろと言った。その答えがこれなんだろう。なら俺は勝手に解釈するよ。レヴィ、お前は俺が好きなんだ。考えた末に抱かれていいと思うくらいにな!」ロックはレヴィを押し倒したままやはり真っ直ぐ見つめてそう言った。レヴィの瞳に光が戻り、それは不安定に揺れた。「…うるせぇ、さっさと突っ込みな。」「逃げるなよレヴィ。そうやって逃げるのはお前のずるいところだよ。俺を見ろよ。何故、ここに来た?何故、俺の気持ちを知っていながらここへ来たんだ。」ロックの視線から逃げるようにレヴィは顔を背け笑う。「うるせぇんだよ。それをアタシに言わせてぇのか、ロック。」「ああ、言わせたい。俺はただレヴィを抱きたいんじゃない。何度言えばわかるんだ。俺はレヴィが好きだ。その返事を待ってる。」ロックの真っ直ぐな視線と言葉にレヴィは胸が熱くなる。「…わかんだろ、言わせんな。」戸惑いを含ませた声でレヴィは言った。「なら勝手に解釈する、それでいいんだな?」ロックはレヴィに顔を近づけて囁くように言う。レヴィの身体がほんの少しビクリとはねた。そして「オーライだ。それでいい。お前の好きに解釈しろよ。」その言葉を合図にロックはレヴィにキスをした。軽く、触れるだけのキス。そして体重をかけすぎないようにレヴィを抱き締め「ありがとうレヴィ。でも今夜はこのまま眠ろう。泥酔した状態で初めて抱くのは、嫌なんだ。」我儘を言うロックにレヴィは腹を立てる。「シラフでんなことできっかよ。」「だからこそだよレヴィ。酒の力をかりないで始めたいんだ。レヴィとのこれからを。」突然レヴィがロックの股間を蹴り上げた。痛みにのたうちまわるロックを押しのけさっさと服を着てガンベルトを身に付ける。「この朴念仁が。」捨てゼリフを残してレヴィはドカドカと大きな足音を立て扉を蹴り開けて部屋を出て行った。痛みが治まった頃、ロックは「そりゃないよ。」と呟きながら笑った。

アホのクソボケインポ野郎、レヴィは思いつく限りの悪態をつき路地を歩いては適当な物を蹴飛ばした。レヴィがどれだけの思いで先程の行動に出たのか、ロックはなんとなくわかっていたが、それでもあの場でレヴィを抱きたくはなかった。酒の勢いで始まり惰性で関係が続くのを嫌った。ロックはレヴィの言葉が欲しかった。言葉でないなら、それに匹敵する程の行動が欲しかった。レヴィが素直に好きだのなんだの言う女ではないことは百も承知で、ロックはそれを求めていた。

仕事の終わりにチャルクーワンの通りにあるいつものチャイナボールを食べながらレヴィが言った。「ロックお前はアタシとどうなりてぇんだ。」ロックは少し考えて答える。「正直俺にもよくわからない。ただ返事を待ってるのさ。それからの事は、なってみなけりゃわからない。だろ?」そう言ってチャイナボールの麺をすすった。レヴィも同じように麺をすすり「ロック、好きだ。これでいいのか?」そうチャイナボールに視線を落としたまま言った。驚いたロックは思わず「言葉で返してくれるとは思ってなかったよ。しかもこんなタイミングで。まあレヴィらしいと言えばそうなのかもしれないけど。」ロックの言葉を聞きながらチャイナボールの汁をすすり、ボールをテーブルに音を立てて置いたレヴィは「夜景の見えるホテルで愛の告白でもすりゃいいのかよ。馬鹿馬鹿しい。さっさと食っちまえ。もう帰りてぇんだよ。」そう言った。その顔は笑ってしまいそうなほど可愛らしかったがロックはまた痛い目に合わされるのはごめんだとチャイナボールを平らげ、レヴィと並んで車に歩き出した。車の中でレヴィは窓の外ばかり眺めていた。ロックはついに吹き出した。「あぁ?何笑ってんだロック。」嫌な顔を隠しもせずそう言うレヴィにロックは言った。殴られる覚悟で。「嬉しいんだ。好きだよレヴィ。それからレヴィ。今すごく可愛いよ。」危うく歩道に突っ込みそうな程の裏拳をくらい、それでもロックは笑っていた。

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