暇つぶし人生ゲーム。

□暇つぶし人生ゲーム。F
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暇つぶし人生ゲーム。F

まさかこんなところに活路があるとは思わなかった。よーし、取り敢えず今回は回避ルートに入れたらしいな。よし!やったー!!これなら今後もあるとして、何回かは回避ルートに入れる可能性がある!いける!引き延ばしてどうするんだという気もするが、まあ、よし!良しとしよう!!

とでも思っているんだろう。彼女は小さくガッツポーズをとり笑顔を見せた。

まったく、チョロイな。

彼女に近づき肩を抱くと、え?という顔をして俺を見上げた。そのままその唇にキスをする。また面白い事をされる前に抱き締めて何度もキスをして舌を入れた。彼女の身体が面白いくらいにビクビクと腕の中ではねる。さっきとは別の面白さだが。

「んっんんぅ⁉︎んーっ⁉︎んんっ!ふぁっ!やっめっ…んーっ⁉︎んんっぅっ!」少し唇を離すと声が聞けそうだな。深いキスを繰り返しながら間に隙間を作ってやる。

「んあっ…ちょ、まてっんんっ⁉︎んっはぁっ!あっんっ⁉︎んぅっーっ!!ふぁっはぁっあっんっんっ!んんっ!」

可愛らしい声も出せるじゃないか。さてキスをやめたらどうなるか、そこが本当の分かれ道だ。回避ルートに入れるか?それはそれで楽しみだ。ゆっくり唇を離すと彼女は荒い息と声を漏らしてうつむいて言った。

「ま、まって、くれ、ちょ、やっぱりやめようぜ。なんかコレ、やべぇ。てか回避ルート入れてねぇじゃねぇか。あ、ちげぇ、ここだ、ここからだな。うえ?どうすりゃいいんだ?」

残念。回避ルートには入れなかったな。可愛らしい面白さではヤる気を削ぐ事は出来んよ。

「失敗したな。油断大敵だ。いい勉強になったろう?」そう言って抱き上げてベッドへ歩き出す。

「まてまてまてまて!!早まるな!まだ!まだ!多分!あれだ!面白いぜ?萎えるって!途中でぜってぇ萎えるからよ!やめた方がいいって!なぁ!」

彼女はジタバタしながらあれこれと喋る。その声がいつもより甘い声になっているのには気が付いていないらしい。

「これ以上は待てんな。だいぶ待ったつもりだが?」ベッドで彼女の両手首を掴んで押し倒す。暴れそうだからだ。彼女は真っ赤な顔で涙目になり俺を見ている。変な顔ではなく、非常に可愛らしい顔だ。

「…なら早くしてくれ」そう言って顔背けギュッと目を閉じた。まるで処女のような反応だ。クッと笑って彼女の耳元で囁く。

「そんなに俺に抱かれたかったか?」彼女の身体はビクッとはね、甘い声だが、唸り声のような声を喉の奥から鳴らした。

うるせぇー!喋ってねぇでさっさとやれよ!そんで早く終われ!!耳元とかやめろ!ぎゃあ!お前の声なんかゾクゾクすんだよ!ひええっ!!キスすんなっ!首舐めんな!吸うなーっ!!全部ビリビリする。掴まれた手首までビリビリしてんだよ。野郎のやる事なす事、全部ビリビリしやがる。ちくしょう。こえぇ。どうなっちまうんだ。私はおかしくなっちまうのか。こえぇ。こえぇ。こえぇ。

…ふと、奴の目を見た。愉しみを滲ませた暗い目だ。ああ。なんだ。そうか。

「つまらねぇなぁ。」私はそう呟いた。野郎は私を見つめ「そうは見えんが?」と余裕の笑みを浮かべる。私は言った。

「私はめちゃくちゃやべえ。どうすりゃいいのかわからねぇしどうなるんだかわからねぇ。人生で2番目にこえぇ思いをしてる。けどよぉ、あんたは違うだろ?いままで何人女を抱いたか知らねぇが、それと大差ねぇ、その程度の愉しさなんじゃねぇか?私はそれがつまらねぇ。あんたの余裕が面白くねぇんだ。こんなんじゃこのゲームはすぐ終わっちまうぜ。あんたが飽きるのは時間の問題だ。ここまで面白れぇゲームだったんだろ?ここから一気につまんなくなるぜ?ふつーになっちまうよ。多分私はあんたに惚れ込んでしばらくの間、愛人みてぇな立場におさまるんだろうさ。だがそれで終いだ。あとはあんたが飽きるだけさ。せっかくここまで駒を進めてきて結局この結末だ。つまらねぇと思わねぇか?」

野郎の目がほんの少し見開かれ、そして笑った。

「確かに、君の言う通りだ。他の女よりはずっと愉しい。俺にとってはそれだけだな。まだ、今のところは。だがわからんよ。抱けばもっと君を好きになるかもしれん。飽きるだけとは限らねぇさ。」

なるほど、そう言う考え方もあるのか。だがな、旦那。そんなんじゃどうにも出来ねぇもんがあるんだ。それをあんたは知らねぇ。

あんたに抱かれながら、今までに感じた事のないほどの胸の痛みと快感と幸福、そして悲しみが私を支配する。怖くてたまらねぇんだ。旦那。あんたが好きでたまらねぇんだ。二度と愛した人を失いたくねぇんだ。置き去りにされるのは嫌なんだ。だから。

彼女を抱いたその翌日。書き置きを残して彼女は姿を消した。ちぎったノートの切れ端に、たった一言。「Iloveyou」と書き殴って。

面白い。鬼ごっこか?それともかくれんぼか。どちらにしても逃しはしない。鬼が君を追いかけて行く。さあ、どこまで逃げられるか。これは君の作戦か?追いかけさせて俺を愉しませようと?いや、違うな。君は馬鹿だ。そんな小難しい事では動かない。

君を動かすのは衝動だけだ。俺から逃げ出したその衝動を君の口から聞き出してやる。俺は電話をかけ彼女を捕まえる包囲網を形成し足取りを掴もうとした。だが、思いの外それは難しく、彼女は煙のように忽然とこの街から姿を消した。

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