R12→R18 km

□夜の濃淡に沈む (1)+
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今日は久々、一ノ瀬先生と二人きりでゆっくり過ごせる休日。
学校の外で会う時は、人目を気にして先生の家で過ごす事がほとんどだけど、今日は先生が探したい本があると言ったので、隣町の書店まで足を伸ばす。
…ここまで来たら大丈夫だよね、とお互い微笑みあう。

私は、先生が目当ての本を探している間、邪魔しちゃ悪いなと思って雑誌コーナーで立ち読み。

(あ、この服と靴、かわいいな)
なんて思いながらぼんやりと雑誌を眺めていたら、本を抱えた一ノ瀬先生が "待たせてごめんね" とやってきた。
"何か面白そうな本あった?" と私の見ていた雑誌を覗き込んでくる。
先生の顔が近くて、一気に顔が火照ってくるのがわかる。
私は見ていた雑誌を棚に戻し、顔が赤くなっているのを気付かれないように必死だ。

「せん…、あっ学さん、本はあったんですか?」

思わず "先生" と呼びそうになって慌てて言い直した。
その様子を見ていた先生が、目を細めて頭に手を置いてくれる。

「…気を使わせちゃってごめんね。
 僕の方はもう終わったから、次は
 君の行きたい所に行こうね。」

そう言って私を見つめて微笑んでくれる。
一ノ瀬先生はいつも優しい。
学校でたくさんの生徒の中の一人として接してくれる時も、もちろん優しい。
だけど、こうやって二人で過ごす時はもっと優しくなる。
そんな先生を早く独り占めしたい……。
先生の指に自分の指を絡ませて、先生の家に行きたい、と伝える。

「本当にそれでいいの?
 もっと我儘言ってもいいんだよ。」

先生は私が気を使っていると思ったのか、目の高さを合わせて聞いてくれる。

「…違うんです、早く二人きりになりたくて……。」

ここまで言ったら、お互い真っ赤になってしまった。

「じゃあ、家に向かうよ。」

先生は微笑んで手をしっかり握ってくれる。
掌から伝わるわずかな熱でさえ、身体の奥からじんわりしてくる。
私はこんなにも一ノ瀬先生の事が好きなんだ。
先生も好きだと言ってくれる。

だけど、私と付き合っていると学校に知られてしまっては大変な事になる。
学校内では "先生と生徒" のラインをはみ出さないようにお互い気をつけているつもり。
だから、何の遠慮もなく過ごせる先生の家が大好き。
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