R12→R18 km

□夜の濃淡に沈む (3)
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建物を出る頃には午後7時に差し掛かろうとしていたが、お互い夕食を摂る気分でもなく、そのまま帰路に着く事にした。
車内はどちらとも終始無言で、朱里は窓の外に視線を送り続け、俺はひたすら前を見続けた。

朱里の家の側までやってくる頃には午後9時を少し過ぎていた。
"ありがとうございました" と一礼して車を降りる。
やはり目は合わせない。
俺は "あぁ" とだけ言い、朱里の背中を見つめる。
彼女が家の中へ入るのを見届けてから、車を出す。

車を走らせながら脳裏に浮かぶのは、もう一度見たいと願う、一糸纏わぬ朱里の乱れた姿。
そして心を襲うのは、朱里の心を切り刻んだであろう事に対する、鎖で締め上げられるような罪悪感。
俺自身、もうどうしたら良いか解らなくなっていた。
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