R12→R18 km

□夜の濃淡に沈む (1)
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それからは、学校内で二人を注意深く観察した。
当然だが、皆の前ではあくまで "教師" と "生徒" の垣根を越えている素振りは出さない。
上手い事、やっている。

…一ノ瀬に向ける梅原の笑顔は本当に美しい。
しかし、同時にそれは俺のものではない、という事実に内臓を絞られるような痛みに苛まれる。
あれを俺のものにできないだろうか……。

現状を打破する方法を模索していたが、意外なところから現れた。
今日、2-Aで行った梅原の小テストの結果が、いつも通り散々たるものだったのだ。

…これは使える。
少々気が咎めたが、それよりもきっかけを掴んだ事による気分の高揚に、次第に良心の呵責も感じなくなっていった。




・・・・・・・・・・

小テスト後、はじめての2-Aでの授業。
一人一人に答案を返していく。

「梅原。あなたは一体、私の授業の何を聞いていたのですか。
 これでは、これからの期末試験も悲惨なものになるでしょう。
 いつもの事ですが今日の放課後、小テストの補習を行います。
 数学準備室に来なさい。」
 
梅原は、肩を落とし "はい…" と返事をすると、自席へ戻っていった。
いつもと同じように周りの友人から慰めの言葉を貰っているが、これから彼女の身に降りかかる事について、誰一人予想だにしていないだろう。
ーー当人さえも。

放課後が楽しみで仕方ない。
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