08/15の日記

15:45
本編に滾ったのでクラベル
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がくりと、ベルガーは膝を折った。
負けた。“黄色のデッキに一度として負けたことはない”これは事実だった。だからといって手を抜いた訳ではない。油断?そうではない。恐らくは実力の差。

「…何だ、まだ用か」

ふと目の前に影が下り、ベルガーは顔を上げた。今しがた自分を退けた男…黄色の戦士クラッキー・レイがベルガーを見下ろすようにそこに立っていた。
上から見下ろされる、というのは敗北者である己と勝者である彼との立場の差を思い知らされているようで腹が立った。ベルガーは苛立ちを押さえながら立ち上がる。
負けた以上、相手の要求を呑まねばならない。しかし異界王にこの場を預けられた以上、易々と屈するわけにもいかない。
どうすべきかと思案するベルガーの眼前に、ずいとクラッキーは顔を寄せた。
唐突な行動に驚いたベルガーは慌てて後ろに飛び退く。

「な、何なのだ!?近い!」
「ああ、失礼。ついね」

クラッキーは胡散臭い笑顔を浮かべながら、軽く肩を竦め形だけの謝罪を口にした。

「君って意外と睫毛が長いんだなぁと思ってさ」
「…はあ?」

何の話だ、とベルガーは眉を寄せる。

「だから何だと言うのだ!馬鹿にしているのか?」
「まさか!なんだか女の子みたいだなって思っただけで」

クラッキーの言葉が終わるや否や、ベルガーはその顔に向けて右腕を振り上げていた。惜しくもその拳は、クラッキーの頬に当たる直前でひらりとかわされてしまったが。

「おいおい何をするんだ、危ないなぁ。暴力は良くないね、暴力は」
「黙れ!貴様、言うに事欠いて、おっ…女だと!?これ以上我が輩を愚弄するつもりならタダでは済まさんぞ!」
「誉めたつもりなのに…」
「どこがだ!」

容姿を揶揄されるとは予想外だったベルガーは完全に頭に血が上り、クラッキーに掴みかかった。先程は避けたクラッキーだったが、今度はされるがまま。胸倉を引き寄せられて僅かによろける。
距離を詰めて睨み付けても、クラッキーは表情を変えず口元に笑みを浮かべたままだった。ますます苛立ったベルガーは勢いのまま握り締めた拳を振り上げる。
しかし、その拳は一向に振り下ろされる気配はなく、ベルガーは身動きが取れなくなってしまった。クラッキーを睨み付けたまま、唇を噛む。
クラッキーは笑みを消して、ベルガーの双眸を覗き込んだ。

「…殴らないのかい?」
「うっ、うるさい!」
「君、本当は簡単に暴力を振るえるような奴じゃないだろう」
「っ…貴様、本当に殴るぞ!」
「怒った顔もなかなかcuteだね」
「はああ!?」

これまた予想外の言葉に、ベルガーは思わずクラッキーを突き飛ばした。今の話の流れからどうしてそんな結論に落ち着くのか理解不能だった。
衝撃によろめきつつ数歩後退したところで体勢を整えたクラッキーは、ベルガーの顔を見やり、くっと吹き出した。

「あはは、顔が真っ赤だ。それは怒ってるからかい?それとも照れているのかな」
「なっ…うるさい!黙れ無礼者ぉ!」

指摘されて初めて気付く。確かに顔が熱かった。
しかしそれは怒りによるものだ。バトルで敗北を喫するだけでなく、いいようにからかわれた。屈辱だ。
ギリギリと歯噛みしながら威嚇するベルガーを眺めるクラッキーの表情は、対照的に穏やかなものだった。
一歩足を踏み出すと、ベルガーはびくりと肩を揺らして一歩後退る。
その姿に一瞬目を見開き、クラッキーは堪らずまた吹き出した。

「君、面白いね」
「貴様は不愉快極まりないッ!!」

力の限り吐き捨てるベルガーの様子に、クラッキーは楽しげに笑った。








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芸風被ってるコンビのバトル記念。
ベルガー様の睫毛が思いの外長くてニヤニヤした結果です。
ツンデレヘタレが相手だと、さすがのクラッキーもヘタレない。


いやー、この二人のバトル見たかったんです。ダンと兄様も気になるけど、こっちもノーカットで見たい。DVDの特典とかでお願いしますマジで。
クラッキーとベルガーとかさあ…もう本当にありがとうございますご飯がおいしいです。

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