07/24の日記

20:50
052 怖いもの (GX/吹藤)
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こわいんだ、と彼は言った。
小さな声は、震えていた。縋るような響きを伴い、吹雪の耳に届いたのだった。

「何がこわいんだい?」

宥めるように背を撫でてやり、吹雪は殊更優しく囁いた。
恋人は、頼りない声音で答える。

「優しくされるのがこわい」

吹雪の腕の中で縮こまりながら、藤原は顔をその胸に埋めてふるふると首を振った。その駄々を捏ねる幼い子供のような仕種に吹雪は笑みを浮かべる。
事実、子供のようなものだ。吹雪の庇護を求める、か弱い存在なのだ。
浮かんだ笑みが声に滲むのを隠そうともせず、吹雪は問い掛ける。

「うーん…それは“まんじゅうこわい”みたいな話かな?」
「は?」
「ああ、うん。冗談だから睨まないでくれ」

顔を上げた藤原の険しい表情に思わず笑みを苦いものに変えながらも、吹雪は上機嫌だった。
柔らかく長い髪を撫でるように梳き、時折指先で頬を撫でてやる。藤原は戸惑いつつも、次第にうっとりとそれに身を任せていく。

「きっとそのうち慣れるよ」

そっと、何でもないことのように告げてやると、藤原は一応の安心を得たらしかった。そのまま目を伏せて吹雪の胸に顔を埋める。
幸せを享受できずに怯える恋人は、それはそれは可愛らしく、哀れで愛しい。
吹雪はうっとりと微笑みながら藤原を抱き締めた。





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ぶきふじ。今地元で放送してるGXがワカメ大暴れ回だったのでつい。
藤原は本当にかわいい子だと思います。でもオネストが喋るとついつい笑っちゃいます。

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