07/08の日記

14:17
衝動に任せたクラダン
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やってしまった。
魔が差した、としか言いようがない。
僕はだらだらと冷や汗を流しながら、白いシーツに広がる燃えるような赤い髪を見下ろした。
ダンはきょとんと大きな目を瞬かせて僕を見つめてくる。何がなんだかわからない、といった様子だ。
普通、恋人にベッドに押し倒されたら、次に起こり得ることは想像に難くないはずなのだが、相手はダン。そういったことに疎い彼が戸惑うのも無理はない。
というか、僕の行動が唐突過ぎたんだ。それは痛いほどわかってる。
だからこそ、僕は彼の肩を掴んでベッドに押し付けたまま少しも動けずにいたのだ。

「どうしたんだ?クラッキー」

問い掛ける声音は僕を心配したものだった。ますます、自己嫌悪が加速する。早く退かなくてはと頭では思うのに、僕の両腕はぴくりとも動かない。
僕は君に案じてもらう資格なんてないんだよダン。
ああ、言えるわけがない。デッキ調整のためにカードを広げて、一枚一枚愛しそうに捲るその指の動きに欲情しただなんて。
何も知らない彼を組み敷いて全て奪ってやりたいと、いつもそんなことばかり考えているなんて。

「おーい、クラッキー?」
「なんでも、ないよ…ダン」
「ほんとか?なんかお前、泣きそうな顔してるぞ」

え、と驚きに目を見開いた僕の頬に、ダンが手を伸ばす。
そっと、あの荒っぽいダンからは信じられないような優しい手つきで僕の頬を覆う。
あたたかかった。

「そんな顔するなよ。オレ、笑ってるクラッキーの方が好きだよ」

社交辞令でもなんでもなく、本心から真っ直ぐに放たれるダンの言葉。じんわりと染み込むようにそれは僕の胸の中に広がり、強張っていた両腕から力が抜けた。
ずるいよダン。本当に泣きたくなるじゃないか。

「僕も、君の笑顔が好きだよ」

なんとか言葉を搾り出した僕に、ダンはとびっきりの笑顔を向けてくれた。
笑顔だけじゃない。僕は君の全てが大好きだよ。だからこそ、全部欲しいと思ってしまう。
いつか…君にもわかってもらえるかな。






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…ギャグのつもりがシリアス(?)に。
本編のダンが格好良過ぎて困る。というか気付いたら半年ぶりくらいのクラダンだった。

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