07/07の日記

22:53
約束の代わりに (DFF/89)
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「スコール、七夕って知ってるか?」

目線の随分下から問い掛けられ、スコールは視線をゆっくりと落とした。年齢のわりに小柄な少年…ジタンは悪戯っぽい笑みを浮かべながら首を傾げていた。

「なんだ、急に」
「今日は七夕なんだってよ。なあ、お前知ってる?」
「…それくらい知ってる」

元の世界の記憶は酷く曖昧で、ふとした拍子に断片的に甦る。スコールが七夕と聞いて思い出したのは、元の世界にいた時でさえおぼろげであっただろう幼い頃に、短冊に願いを込める己の姿だった。
何を願ったのだったか、と普段から寄った眉間の皴を更に深めながら考え込むスコールを尻目に、ジタンはうっとりとした様子でまだ青い空を見上げた。

「俺の世界では無かったんだ。クラウドに聞いたんだけど、ロマンチックな話だよなぁ。あ、ティーダが願い事するって笹探しに行ったぞ」
「あるのか、この世界に」
「適当にライズ出来るんじゃね?」

両腕を頭の後ろで組んで機嫌良く尾を揺らすジタンを眺める。彼の言うロマンチックな話というのは織姫と彦星の話のことだろうが、何処にロマンスがあるのかスコールには判然としなかった。

「なあ、スコール」
「なんだ」

空を見上げていたジタンが、ふとスコールへと視線を向ける。そのいつになく真面目な表情に、スコールは微かに息を呑む。

「俺は、年に一度じゃ満足しないぜ?」

言ってから、ジタンは破顔した。いつものように、無邪気で、どこか悪戯っぽく。
いずれ離れる定めの自分たちを指した台詞だと、気付かぬ程鈍くはない。
織姫と彦星は、結ばれた途端に怠惰になり天帝の怒りを買い引き離された。自分達はもとは違う世界の、今この一時だけを共にする運命。この戦いが終わりそれぞれが元の世界戻れば、年に一度どころか生涯逢うことさえ叶わぬだろう。
けれど、スコールの恋人はそれでは許してくれないらしい。

「…贅沢だな」
「お互い様だろ?」

スコールは思わず、ジタンの掌を掬い上げるようにして掴んだ。
口にはしない。言葉にしたからといって叶うものじゃない。
ただ、この手を離さなければいい。離すつもりもない。
何も言わず、だがしっかりと手を握るスコールに満足したのか、ジタンは頬を緩ませて視線を空へ戻した。

無事に笹をライズしたティーダが呼びに来るまで、二人が手を離すことはなかった。






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久々89。時事ネタ使ったのって久し振りじゃね?(ギリギリですが)
最初フリティで書こうとして暗い話になったのでやめました。切ない話も好きだけど、210は笑顔できゃっきゃうふふしてて欲しい。
関係ないけど、スコジタの“ししとう”、って略称が好き。



おまけ +KYティーダ

「おーい、ジターン!ゲットしたッスよー笹!!」
「おー、こりゃまたでっけーの取ってきたなぁ」
「あれ?スコールもいたッスか?」
「…悪いか」
「さ、ティーダ。早くみんなのところに持ってってやろうぜ」
「?おう!」
「…」
「ほら、スコールも」
「…ああ…」

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