06/18の日記

16:37
085 苦痛 (KN/ガネット)
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私だけの世界。
心地良い微睡みの中で目を閉じれば、あの時私が“殺した”あの人が、そこに居る。
それは初めはぼんやりとした頼りない輪郭で、しかしすぐにはっきりと“彼”になる。当たり前だ。どれほど時が経とうと私が彼を忘れるはずがないもの。いつだって、鮮明に、髪の毛一本まで完璧に再現できる。
この瞼の内ならば。

毎日毎日、泣いても泣いても涙が溢れ、胸を刺す悲しみと呼吸が出来なくなるような息苦しさの中、瞼の裏に焼き付いた動かない彼の姿を見ながら眠る。そんな日々の繰り返し。
でももう、私は涙を流すことは無い。
本当に悲しい時は何も考えられなくなるらしいから、きっともう私の悲しみは薄れてしまったのだろう。
ただ、虚しいだけ。
胸に抱いた厚い本には、物語が綴られている。長く短い、悲しくて幸せな物語。
そう…だから私はもう悲しくはない。
私が彼を愛していること、私が彼を殺したこと、そして苦しみだけはずっと消えないこと。
誰も居ない、時の止まったこの世界で、それだけは永遠に変わらない。

それでいいの。この苦しみは、私だけのものなのだから。






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絵本製作途中のガネット姉さん。

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