□【罪と…罰、ヲ】執筆中
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「ねぇ…どうしちゃったの、黒?僕達、兄弟でしょ…?」

『……俺は少なくとも兄弟じゃねぇよ。本体の分身でしか無い…御前等みたいに"肉体"がある訳じゃねぇ』

「…!」



黒神の言葉に白神は言葉を無くした。
同時に体が無性に震えだす…。其れは黒神が如何にして今、此処に自分が存在する術を手に入れたのかを悟ったように。

黒神は淡々と話を続けた。



『俺は…何千と時を経て辿り着いた。
どうすれば、自分の魂に…肉体を手に入れ、未来永劫…腐らない術を。』

「黒……」

『術が在れば、其れに馴染む魂になれば良い。
俺以外の人間は其々…守護神が居るから良いと思うが、俺には其れが無ぇし。だったら…殺すしかねぇだろ?』


黒の言葉に、自分達には気付かない心の傷みが見えた。
自分達はこの世界を守る為に在る。
だが、其処までして神達が築き上げて来た代償は…
民衆にも計り知れない壮絶な過去が存在する事を。

だからこそ白神は黒神には優しく接していた。
其れは民衆達を安らぎを与える為にあって、
もう一つは…黒神自身の立場を想って。

其れなのに…彼の感情は想っていた以上に憎しみを隠し切れなかったようだ。
白神も彼の悲しい立場を考えたら、説得なんて…出来る立場じゃない事は承知の上。

然し、此処で彼の暴走を食い止めるのも神としての役目。



「でも…金神君は少しでも君に冷たくしたり、恨みを持つ様な事は一言だって言ってないよ?」

『別に誰でも良いって訳じゃねぇんだ…俺だって態々アイツを選んだのにだって……理由があんだよ。逆に感謝しれるぜ、新しい肉体は…想像以上に動きが良い。』


「黒…この世界の汚点…、反逆者になっちゃうよ……良いの…?」


素直過ぎる彼の言葉に、白神は涙が零れた。
決して悲しいから流れた涙では無い…彼を此処まで追い詰めたのは、"この世界"だったのだ。

同じ兄弟なのにこんな目に遭うのは、彼自身だって望んで居なかった筈…

言葉にならない白神に、黒神は続いて口にした。


『所詮、本体が"永遠の神"として崇められ無ければならない以上、この…誰でも持つ己自身の"闇"を隠さなきゃならねぇからな。』

「黒……それは----…ι」


神として政権を担う為に、伏せてある事実を口にされて白神は瞳を揺らした。
この教えは極少数にしか知らない。
この教えにおいては少なからず、賛同している者は居ないのだが…時代はもう何千と過ぎても、この教えを無くす技量を持つ者は居ないのだ。

そして其の度に

"反逆者は幾度に存在し、未来永劫…消滅する事は無い"のだ。
また、彼も…神であり、その時代の教えの犠牲者。



『俺は…アイツの闇であり、全ての人間にとっても…お偉い方々からも疎まれる存在でしか無い…』

「……」

『…御前等に俺の感情など、理解出来る筈が無いだろう?"日の光の下"にすら当たる事も許されなかったこの俺に……』


黒神の言葉は痛い程に分かる。
反逆者が出る度に、目上の使いが幾ら掛け合っても…
その人間は何処へ消えたのか…。誰一人として帰って来なかった。

そんな小さき命を他人の為に捨てたくはないと、誰も其の教えは胸に仕舞い込んで、二度と口にしなくなったのだ。
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