ロシアンシスターズ
□スパイ1
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通称「石の国」ともよばれるロシアン王国の首都、ロシアンタウンに住んでいるプロのスパイだ。
彼女達は「ロシアンシスターズ」略して"ロッシー"とも呼ばれ、国からでも正式に認められているスパイだった。
しかし3姉妹は決して友人や知人などにスパイだと知られてはいけないルールがあった。
もしも知られてしまえば島流しされてしまう。
そう、国からは蒸発として片付けられ二度と祖国の土は踏めないのだ。
しかしなぜそんなスパイ活動を行ってるのかといえば………
それはまた今度。
表の顔では学生として学校に通っているロッシーは、スパイとしての教養ももちろん受けなくてはならなかった。
ということで毎週2回は国から教育係として雇われている"春日さわち"のもとで授業を受けている、というのが現在までのくだりである。
そしてこのさわちだが年齢はまだ18歳と、ロッシーと同じく若い。
なぜこの少年がロシアンシスターズの教育係を勤めてるのか……
それもまたいずれ話すとしよう。
「このゴワンズ卿ですが後のスパイ歴史に残る人物になるといっても過言ではないです」
ポカーンと聞くナーナとマキラーをよそ目にさわちは尚も話を続けた。
「先月、ミッチャさんはスパイ遠征としてターゲットのいるバレー半島へ向かいました」
「それは知ってるよ」
ナーナとマキラーは一緒になって頷いた。
さてこのスパイ遠征だが、ナーナ達スパイはこれまた国からのルールで、3年に1度国から指定された場所へスパイしに渡ることになっている。
ナーナとマキラーもそれぞれスパイ遠征は経験済み。
現在は今年17歳をむかえた2人の妹"ミッチャ"が今回のターゲットのいる島へ遠征に向かっているというわけだ。
このスパイ遠征は長引けば3ヶ月はかかるという。
それだけ本格的なものだった。
そしてミッチャは遠征に行ってからもうすぐ1ヶ月たとうとしていた。
「で・さわち。今回の授業とそのゴワンズって野郎がどう関係あるっていうんだ?」
「あなた達2人はゴワンズ卿について知らなすぎですからね。今から彼について教えます」
「どういうことだ?」
さわちの言葉にマキラーが思わず問い返す。
「ゴワンズ卿は金と権力を握った冷酷な男です」
そう言った途端、ナーナとマキラーの顔は急に固くなる。
「もしかしてミッチャに何かあったわけ?!」
「妹がどうかしたのかよ!」
2人の脳裏にとっさに浮かんだ"妹の死"
「ご安心を。ミッチャさんは無事です」
「なんだ、驚かせんなよ」
「びっくりしたーーー」
しかし2人の安心も束の間だった。
「無事にこちら側で保護しました…」
「え?!」
保護という言葉を聞いて再び不安に陥った。
「さわち、てめ…!妹にケガはないんだろうな!?」
勢いよくソファから立ち上がってマキラーがそう怒鳴る。
「ケガはまったくありませんよ」
「保護されたってことは今回の遠征に失敗したの?」
ナーナの質問にさわちは頷いた。
「この間遠征から帰ってきたばかりですからね。明日にでも合流できます」
「そうなんだ!?」
「はい」
「あぁあ〜〜なんかスッキリこねえ!そんなやばい男相手に今回の遠征妹に組ませたのか?」
マキラーは苛立ちを抑えきれない顔で不満を漏らした。
「ま、そうなりますね」
「あっさり肯定してんじゃねーさわち!!」
「まあ僕に文句言っても上からの指令なんだから仕方ないですよ」
この部屋に来て始めての笑顔でさわちは答えた。
「こんな状況で笑顔なんて上等じゃねえか!!」
「僕が深刻な顔で無事と言ってもあなた達は不安になるだけで信じないでしょう?
それだけミッチャさんの命には別状ないってことですよ。分かんないかなぁ…僕の気遣い」
「知るか!」
なんだかんだいってマキラーも、ミッチャがホントに無事なんだと分かりホッとした。
「ではミッチャさんの安否も分かったことですしゴワンズ卿について引き続き話しをさせてもらってもいいですね?」
2人の頷く顔を確認するとさわちは再び話し始めた。