ロシアンシスターズ
□スパイ5
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-ステイホームタウン-
ロシアンタウンからずっと南にある移民街。
世界でも多くの移民族の住むロシアン王国最大の移民街だった。
美しいロシアンブルー海峡に面し交易も盛んで、多種多様な文化や言葉が行き交い街は賑わっていた。
そんな街の中を楽しそうに歩く人間とふてぶてしい顔で歩く人間が2人。
ナーナとマキラーだ。
「くそ!!」
いきなりそう悪態をついたのはマキラーだった。
「え!?あんたひさしぶりのお姉さんとのうきうきショッピングで第一声がそれ!?」
「何がうきうきショッピングだ!」
そう怒鳴ると抱えていた買物袋からチサ島名産デビルトマトを取り出すと、今にもナーナに投げ付けんばかりの形相でふりかざした。
「ギャーーー!!!!」
「たく!こんな遠くまで買い物させられてよー!!!」
怒りおさまらない顔でマキラーは怯えるナーナを前にデビルトマトを袋に戻した。
「だって明日はミッチャの帰郷祝いじゃん!!ボルシチ作るんじゃん!!」
「それは分かってるよ。だけどわざわざ移民街まで来て材料を買う必要があったのか?」
マキラーが愚痴を言うのも仕方なかった。移民街までロシアンタウン中心地からバスが出てるとはいえそこからが大変だった。
街の看板はチサ島・バレー半島・注国・サウジアラビキ共和国などたくさんの外国語であふれていた。
その街の中を買い物リストに書かれている食材を買うため一軒一軒店を探し回るのは大変だった。
「さわちの奴…こんなリストよこしやがって!!!」
マキラーは5時間前、さわちから遠征の話を聞いた後に貰った夕飯の買い物リストを恨めしそうに睨んだ。
「あなた達に買い物は無理でしょう…」
「はあ?!なめてんのか!!買い物くらいできるに決まってるだろ!!!」
そう言って受け取った買い物リストのメモ。
まんまとさわちの挑発にのってしまった自分にマキラーは悔やんだ。
リストの下には小さな文字で
『つぶさない・投げない・食べない』
の注意事項が書かれてた。
「なめやがって!!」
マキラーは苛立ちを抑えきれないでいた。
「でも買うのはムシャムシャ…あと1個だけだよね?ムシャムシャ…」
「ああ………てあんた今何食ってんだ…?」
「え?サイパイ島名産虹色マンゴー!」
ナーナは親指を立てグッドポーズで微笑んだ。
「ふざけるなーーー!!!」
「1個くらいいいでしょ!?1個くらいでしょ!!?」
「あんたはガキか!!!さっそくさわちの注意事項を破りやがって!!!」
そう怒鳴り再び買物袋からとっさに取り出し投げつけたのは先ほどのデビルトマトだった。
「ギャーーー!!!ついに投げたーーー!!!」
直径30pもある悪魔のような黒いトマトを顔面にくらいナーナは地面の上に倒れた。
「ふん…」
さわちからのメモの注意事項を自分も破ってしまった事に気付く事なくマキラーは残る食材を買いに急いだ。